▼ 5.波の国へ超出発! (10/10)
「この言い伝えは、水の国を中心にして伝わっているらしい。もし言い伝えが本当で密かに一族が復興していたら――」
帰る方法が見つかるかもしれない。
実際、言い伝えを検証し、その時野一族が暮らしていたと思われる場所は見当がついているらしい。
そしてそこからは、見慣れない装飾が施された食器類が発見されたという。
それは外界と接触のなかった時野一族独自のものに違いない、と。
嘘臭い、信憑性のない話だとソラは思った。
しかしそこには、木ノ葉では見つからなかった希望がある。
どんなに小さな可能性でも、少しでも手がかりがあるなら、今はそれに賭けるべきだ。
カカシもそう思ってこの計画を企てたのだと、イルカが教えてくれた。
ソラは机の上にまとめた巻物を見つめる。
本気で波の国行きを拒否すれば、きっとこの巻物と一緒にアカデミーで過ごすことは可能だろう。
しかしイルカの話を聞き終えた今となっては、気持ちがどちらに傾いているのか、とっくに気づいてしまっていた。
「…私は、波の国に行っても、いいんでしょうか」
おそるおそる切り出したソラに、イルカは大きくうなずいた。
「ああ、行ってこい」
「でも絶対カカシ先生の負担になります」
「そのカカシさんが発案したんだ」
「そっか…じゃあ、思うぞんぶん迷惑をかけよう」
お互いふっと笑いがもれ、空気が和やかになっていた。
「ソラも言うようになったな!」
家族でもなければ生徒でもない。
里の者ですらなかった赤の他人。
それなのに見返りも求めずにここまで尽くしてくれる。
きっと、イルカがそうすることに特別な理由は必要ない。
困っているから助けるという、ごく自然なことなのだろう。
そしてナルトは、この暖かさに守られてたから、まっすぐ育てたのだ――嬉しそうに笑うイルカを見ていたら、ソラもなんだか頑張れるような気がした。
「イルカ先生、行ってきます」
今はただ、イルカの純粋な気持ちが嬉しくて。
手早く支度を済ませたソラは深々と頭を下げてから集合場所まで走った。
そこではもう一人感謝すべき相手、カカシがソラを待っている。
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