時空の死神 | ナノ


▼ 5.波の国へ超出発! (7/10)

ぽん、と前触れなくサクラの肩に手が置かれた。
カカシとしては慌てかけた生徒を落ち着かせるつもりだった。
真後ろにカカシが立っていたことすら気づいていなかったサクラは、少女らしく悲鳴を上げた。

「い゛ーやぁー!!!」

そしてその少女らしからぬ悲鳴にあわせ拳をふるわれ、振り向きざまの攻撃をカカシはすれすれで避ける。

「うわっ、危ないなぁ…」

「ちょっと先生ッ、いきなり背後に回り込まないでよ!」

「悪い悪い…で、なんの話?」

「あ、そう、ソラさんが…」

サクラが事の経緯を話そうとすると、意外にも、口数が少なくなっていたソラが凛とした声で言った。

「話がまとまったばかりで申し訳ありませんが…。私、今回の任務にはついていけません。辞退させていただきたいです」

カカシを見上げる瞳に揺るぎはない。

「ふぅん、それ、どういう意味?」

「この任務、たぶん私がいたら迷惑がかかります。ですから――」

「あのね、ソラ。なんか勘違いしてない?」

ソラの言葉を断ち切るようにカカシが話し始めた。
目が、冷たい――と、サクラは思った。
そう、まるでサバイバル演習のときのように。
あのぞっとするような見下した目を、カカシがソラに向けている。

なぜだろう。
ソラのことを仲間だといって歓迎会を開いたのは、他でもないカカシだったというのに。

「迷惑がかかろうが、火影様そう仰るならオレたちはそうしなければならない。命令は絶対だ。如何なる場合においてもそこに疑念の余地はない。仮にもこの里に住まわせてもらっているお前が、自分のわがままで任務をえり好み出来ないことくらい分かるだろ。
お前さ、自分が守られてるからって、ちょっと調子に乗ってんじゃないの?」

「そ、んなっ…私はただ!!」

ソラが口調を荒げた。
そのときだった。

「――どうかしましたか?」

イルカが険悪な雰囲気を感じとってか、さりげなく会話を差し止めてきた。

グッジョブ、イルカ先生!
ナイスタイミングよ!

内なるサクラもガッツポーズをする中、張り詰めていた緊張の糸が緩む。

「あ、なんでもないです。お気遣いなく」

カカシは右手で頭の後ろを掻き、たいした問題ではないとアピールをした。
イルカに向けたその表情は、もういつもの気の抜けたカカシのものだった。
しかしイルカへと伸ばされかけたソラの手を、カカシはしっかり捕まえている。

「じゃあこれから任務に移行します。ナルト、サスケ、サクラ、お前たちは一度家に帰って支度を。三十分後には出発だ。集合場所は里の出口。以上、質問はあるか?」

てきぱきと指示を出し、七班を解散させようとさせるカカシ。
視線でしっかりとソラを威圧していた。
その雰囲気に、誰もが口を挟むことをはばかられた。
開きかけたソラの口が力なく閉じ、泣きそうな目になっている。

「あ、そうだソラ。里を出る前に、ソラに貸していた巻物を返して欲しいんだ。授業で使いたい先生がいるらしくて――火影様、量も多いのでソラの家に取りに行ってもいいですか?」

空気が読めないのかなんなのか。
不自然すぎるほどカカシとソラの険悪な空気には突っ込まず、イルカは明るい調子で話しかけてくる。
ソラは、固く結ばれた口を開けることなく、小さくうなずいた。

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