▼ 4.ヒコーキ雲 (12/13)
「ちょっとそれどういうこと?私がソラに会ったとき、そんな感じは…」
「ま、言いたいことは何となく分かる。だから黙って最後まで聞いてくれ」
まくしたてる紅をカカシが遮った。
紅以外にも注意を喚起するように、その場にいる全員に、一度視線を巡らせた。
そして何も言わないのを確認すると、先を続ける。
「紅の言うとおり、確かに出会った当初のソラからは一切チャクラの気配を感じませんでした。しかしここ最近なぜかその気配を感じるようになりまして。
忍でない者でも、ある程度のチャクラはあります。しかしソラのそれは、なんと言いますか…」
「なんじゃ?」
「……おかしいん、ですよ」
そこまで言うと、カカシは一旦話を区切った。
「一度チャクラを使い果たせばしばらくは動けない。ソラもサスケと悶着があった後しばらく眠り続けたので、それは当てはまるのですが、明らかにチャクラの回復が遅い。しかもその回復でチャクラは底なしと思えるほど増え続けている。
しかし、そもそもソラは忍でないから忍術は使えないはず…。それならなぜあんなに大量にあったはずのチャクラが、出会ったときは皆無だったのか――。
ソラのチャクラに関して説明しようとすれば、必ずどこかに矛盾が生じてしまいます」
カカシが報告したいことがある、と上忍を集めたのはアスマも知っていた。
しかし火影室にはそれ以外にもちらほらと中忍やら何やら、どこかで見たことはあるが記憶には残らないような人物も混ざっている。
一体何を言い出すのか。
カカシはどちらかと言えば、ソラを可愛がっている方だと思っていた。
しかし言っているのはソラの信用を損なうことばかりだ。
そのときアスマは、ついさっきまで一緒にいたソラを思い浮かべていた。
微かに洩れ出していたチャクラは確かに気になったが、取り立てて口にすることでもないと感じていた。
カカシ班はほぼ毎日任務にあたっていたから、特に敏感なのか――?
「だから本当は他国のスパイで、オレを欺けたのは記憶を一時的に忘却させていたからではないか。きっとそのうち里を裏切り何かしでかすに違いない――」
カカシが、窓際にいた集団を見渡した。
アスマが見慣れない顔だ、と感じた面々だった。
――なるほどな、そういうことか。
アスマは紅と目を見合わせた。
紅もカカシの意図に気がついたらしい。
「ですから、一度ソラを里の外に出してみるべきではないかと思いまして、火影様及び里の上忍と優秀な忍に集まっていただいた次第です。
質問及びご意見のある方はいらっしゃいますか?」
カカシの発言は、挑戦的だった。
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