▼ 4.ヒコーキ雲 (6/13)
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「あーあー。まったくチョウジは、食べ物が絡むとすぐこれなんだから」
「とりあえずオレらも仕事すっか」
取り残されたソラたちはそのままゴミを拾いながら歩くうち、里の中心から外れ、周囲にはどんどん自然が増えてきた。
つい最近任務で草むしりがされたのか、むっとするような濃い緑の匂いを感じた。
この辺りは覚えがある。
ソラが立ち止まると、森の奥から声が響いてきた。
「影分身の術ッ!!」
やはり、七班が修行している演習場だ。
ナルトは忍者のくせに馬鹿正直に技名を叫び、今日も真っ正面からカカシに勝負を挑んでいる。
影分身なんか使われては、ソラの危険度は倍増する。
カカシ扮する仮想の敵と間違えられ、武器を向けられかねない。
カカシの判断に誤りはなかった。
「何あれ、ナルトの声?」
「うん、今日修行するって言ってたから」
「じゃあサスケ君もいるの?」
心なしか、いのの瞳が輝いている。
「同じ班だからいると思うけど、」
「私こっちの方やるから!シカマル、後は頼んだわよ!!」
その俊敏さは恋する乙女のなせる業か。
言うや否や、疾風のごとくいのは走り去った。
そうか、とソラはつぶやく。
いのがサクラと対立する理由を、ようやく思い出したのだ。
下忍の合格者説明会でサスケの隣を争っていた女子の筆頭は、サクラといのだった。
いのも、あのサスケが好きなのだ。
「まったくいのは、サスケが絡むとすぐこれだぜ」
ついさっきどこかで聞いたばかりの台詞繰り返したシカマル。
後には二人だけが残り、ナルト以外に男の子と二人きりになったのは初めてだと思うと、ソラはやけに緊張した。
「……とりあえず、行くか」
シカマルは面倒臭そうにそう言うと、返事も待たずに歩き出した。
ソラがついて来ると信じているのか、一度も振り向いたりはしなかった。
それを癪に思いながら、しかしソラもソラで単独行動をする度胸もなく、結局早めの歩調に合わせてついて行くしかなかった。
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