時空の死神 | ナノ


▼ 3.新しい服 (10/11)

普通とはいったい、どういうことだろう。

まるで哲学的な命題だった。
人の価値観の数だけ答えがありそうな問題に、ソラたちは果敢に挑んだ。

しかしソラは自分の持つ普通の感覚すら上手く言葉に出来ず苦戦を強いられる。
もしソラがファッション用語をもう少しでも使いこなしていたなら、ここまで苦労する必要もなかったろう。
しかし生憎、制服のブラウスとブレザーすら混同していた女子中学生だった。
なんでもかんでも横文字で格好つけているところがまず理解できないと、そう言っては敦史に呆れられていた。

ソラも少しは見た目に気を遣えよ…。

あのとき笑い飛ばして終わっていたその言葉が、今になって重くのしかかってくる。

オシャレに疎いソラは、可愛いサクラのことは好きだけれど、そのサクラと話が噛み合わない。
せめて消去法でこれは嫌だとそれだけ伝えたくても、これを一般的になんと表現すべきかが分からずに、延長に延長した話し合いは長期戦へともつれ込んだ。
そんなこんなでサクラと押し問答をしていると、偶然にも紅班に遭遇した。

「あら、ソラじゃない」

紅は先生らしく、男の子二人と女の子を引き連れ、任務帰りに火影様に報告をしに行く途中のようだった。

「こんなところで何してるの?」

「ちょっと買い物に…」

商店街の入り口で立ち話をしているのを不思議がられソラはそう答えたが、絶対そんなふうに見えなかっただろうなと自覚があり苦笑した。

それから一瞬助けを求めようかと迷ったところで、すぐに思い直した。
相変わらず奇抜な格好の紅はソラの普通を理解してくれそうにない。
しかしソラの目が、紅の隣に立つ女の子に釘づけになる。

「これぞまさに普通だーーー!!」

思わず力んで叫ぶと、その子はびくっと体を震わせて紅の後ろに隠れた。

「え、何、どうしたの?」

「いえ、こっちの話です!それより紅さん、ちょっとその子、私に貸して頂けませんか!?」

「えっ…わた、私!?」

今にも消え入りそうな声で、子犬を虐めている気分にもなるが構ってられない。
ここで粘らなければ、サクラの買い物呪縛からいつまでも逃れられないと、ソラの本能がそう告げていた。

「紅さん!」

必死さのアピールに、紅の手を固く握った。

「任務は終わったから平気だけど…ヒナタ、行く?」

様子を窺うような紅の声に、ソラはもう一押しだと直感する。

「お願いします!!」

これで承諾されなかったら、土下座でもしていただろうと、逆に冷静になっていたサクラは後に語った。

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