▼ 3.新しい服 (6/11)
「――で、なんですか、コレ」
「んー、たぶん、ナルト?」
「で、何してるんですか、カカシ先生」
「見てのとおり、読書の続き」
「ナルトは」
「アホらしくて助ける気にもならないでしょ」
「……確かに」
ソラが追いかけていた頼もしい背中はどこへやら、近くの木にもたれてカカシは読書の続きを楽しんでいた。
そしてそのカカシの正面にある木の下に、なぜかナルトがぐるぐるに巻きつけられていた。
「ソラでもいいから助けてってばよ〜!」
「……えぇー」
「えぇーって、何その反応!?カカシ先生と丸っきりいっしょじゃねーか!ってお前、来んな、舐めんな、重たいんだってばよ!ってヒィギャアァァァアァァ〜〜〜!!!」
ひもの先をたどると、任務開始時に託された犬がいる。
百一匹わんちゃんも驚く見事な拘束ぶりである。
大方、木の側でつまずいたところを、走り回っていた犬によって縛りあげられたのだろう。
座り込んだまま動けないナルトの上に犬が覆いかぶさって顔を舐め回している。
「……してやられたみたいね」
犬ごときに、なめられたものだ。
火影になるとか大見得切った忍者を前に、思わず溜め息がもれる。
仕方なし側まで寄って、ソラは膝を手で叩いた。
ぱんぱん、と聞こえてきた音に、ナルトに乗っかっていた犬がぴくりと耳を動かす。
興味を引きつけたまま、ソラは手を叩き続け、巻きつかれたひもとは逆方向に歩きだす。
すると遊んでくれていると勘違いした犬が、ソラに走り寄り、あれだけ締まっていたナルトの体にも余裕ができた。
「やっと助かったってばよ…サンキュー、ソラ」
立ち上がるなりにかっと笑って差し出された右手は犬のよだれでベタベタで、ソラはそれをさりげなく拒む。
「それにしてもソラは動物の扱いが上手いなァ」
片目で様子を窺っていたカカシが話しかけてきた。
「なんか飼ってたりしたの?」
「いえ、特には」
「そのわりには手慣れてたよね。誰かさんとは違って」
ジロリ、ナルトを見る。
「え、何なに?それってもしかしてオレのこと言ってるのか?」
「そうだよ。ったく忍でもない女の子に助けられるとは」
「だってカカシ先生が助けてくれなかったからだろ!」
「あのね、そういう問題じゃないでしょ」
ナルトの脳天に、ゲンコツが降る。
「あ痛ッ」
二人のテンポの良いやり取りに、ソラは自然と笑みをこぼした。
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