▼ 2.出会い-後編- (10/10)
「――で、なんでラーメン?」
「仲直りしたら、普通ラーメンだってばよ」
「…………」
泣きやんで、気がついたら、ソラは彼の有名な一楽の前にいた。
「おっちゃん、塩ラーメン二人前!」
「え、待って、私お金持ってない!」
ソラの制止も聞く耳持たず、ナルトは勝手に中に入っていく。
手を引かれていたソラもその勢いに連れて行かれた。
すると、
「や、ようやく仲直りしたか」
「カカシさん!?」
「ナルトもよく謝れたな」
「イルカ先生ってば、なんでいるんだ!?」
まるで二人が来ることを見越していたかのように、カカシとイルカ先生が待っていた。
「私もいるわよー!!もちろん、サスケ君もね!」
奥の席ではサクラが、その隣にはこんなところには絶対に来そうもないサスケまでいる。
「え、え、なんで、みんな…」
ソラだけでなく、ナルトにとってもこれは予想外だったらしい。
「お前らのしそうなことは大体予想がつくってこった」
「修行の後、カカシ先生から集合かかったのよ。今日ナルトとソラさんが仲直りするから、七時半にここに集合だって」
「なんで?」
「お前の歓迎会、だとよ」
首を傾げるソラに、ぶっきらぼうにサスケが答えてくれた。
「歓迎会って、もう一週間以上経ってるのに?」
「ま、なんだ、ナルトと仲直りもしたし、今日からお前もここにいるオレたちの正式な仲間だってことだよ。だからこれからは、火影様の命とは関係なく、仲間としてソラを守る――その記念だ」
簡単な、ことだったんだ。
ただ自分が受け入れれば良かった。
それだけなんだ。
「でもオレってば、二人分のお金しか持ってないってばよ…」
「ばーか、そんなこと気にすんな。今日はオレとカカシさんの奢りだ!」
元の世界でも、そうしていたら良かったのかも知れない。
どんな境遇で、どんな容姿をしていても、運がないと諦めないで、自分らしく、自信を持って生きていけば。
そうしたら、こんなにも色々な人が、手を差し延べてくれる。
「え、本当?カカシ先生も奢ってくれるの?ラッキー!」
「おーサクラも食え食え。今日の修行は疲れたしな。ただし…ナルトは上限三杯までだ」
「カカシ先生、オレってば、そんなんじゃ全然足りないってばよ!」
「お前な、昨日イルカ先生の奢りで散々食ったろ。少しは遠慮しろ」
「ぐっ…でもそんなの、今日の修行で全部消費したし…」
「消費量のわりには成果がなかったようだがな」
「……サスケェ!!」
今すぐにでも、帰れるものなら帰りたい。
その想いは今も変わりはないけれど、
「私、木ノ葉に来られてよかった」
ソラは心からそう思っていた。
ありがとう。ありがとう。ありがとう。
この賑やかさの中でもソラの声はしっかりと届いていて、皆が一瞬驚き、それから微笑む。
こんな温かい場所が見つけられたソラが、幸せを感じないはずがなかった。
「――今夜はオレの奢りだ」
その日、一楽の店主の言葉を皮切りに、密かに企てられていた歓迎会は、和やかな雰囲気に包まれ始まった。
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