▼ 2.出会い-後編- (8/10)
「あんた、なに言って――」
「だーかーらァ、オレも、ごめん!!」
肘を張り、顔の前で手を合わせたナルトにソラはギョッとした。
「なんで謝ってんの?」
「そりゃ、オレもソラと同じで、悪いと思ったからだってばよ」
これは演技か。
そう疑ってみる余地もないほど、きらきら輝いた目をしていた。
ナルトは純粋さを失わないまま成長してきた子どもだ。
「確かにソラの態度は正直今でも気に喰わねーって思うけど、イルカ先生に言われて分かったんだ。
認めてもらいてぇって気持ち……オレもソラも同じだった。でもオレはそれに気づかねーで、踏みにじっちまった。だから、ごめん」
「本気で悪いと、思ってるの?」
「仕組みは知んねえけど、ソラはオレのこと知ってんだろ?だったら分かるはずだってばよ。オレはサスケにゃ謝らねぇ。悪いと思ったこと、ねえからな」
「…何それ、私の思ってたのと違う」
力の抜けたソラに、ナルトはにっかり笑ってみせた。
「ま、オレも思ってたのとは違ったけど、ソラも謝ってオレも謝って、これで一件落着だってばよ!」
そしてナルトは、握手を求めて右手を伸ばしてきた。
それはつい一週間前、ソラを殴ろうとしていたはずの手だったのに――なんなんだ、こいつは。
想定外の展開だった。
どう対応するのが無難か分からず、ソラはたじろいでいた。
周囲から見放され、自ら運命を切り開いてくる他なかったナルトの手は、歳のわりにしっかりとしていた。
惰性で生きてきたソラとは違う。
どこまでも真っ直ぐなこの駆け出しの忍者が、大きな目標を掲げ、真面目に修行を重ねてきた証拠。
そしてそのナルトは今、真剣にソラに向き合っていた。
これはなんだ、握ればいいのか。
それで終わりなのか。
私は反省しないまま、この純粋な少年を馬鹿にしたまま、それで終わっていいのか。
ほんの少し前まではなかった感情が、ソラを支配していく。
それが何かは分からない。
けれど胸の奥からは確かに込み上げるものがあり、ソラも自然と本音で話していた。
「ナルト…ごめん」
「もういいってばよ」
「ホントにごめん。私、悪いと思ってなかった。これっぽっちも」
「いや、だからいい……って、えェェ!?オレたち、仲直りして、なかったのか!?」
体をのけ反らせ、遅れてオーバーリアクションを取ったナルトの声は裏返っていた。
その瞬間芸にソラは思わず吹き出した。
「あんた、馬鹿?」
「は、何!?それじゃあオレ、騙されてたってわけ!?」
「そうだよ、あんた騙されてたんだよ」
馬鹿だ、あんたは本物の馬鹿だ。
ソラは嬉しそうに繰り返す。
「ナルトのバーカ!」
愛情を込めてそう連呼し、今までにないくらい声を張り上げて笑うソラに、怒りも沸いてこないらしいナルトは、少女の豹変ぶりに戸惑い、頬を掻いていた。
次第にその姿がにじんで不鮮明になり、
「…ありがとう」
掠れた声でそう言い終わる頃には、もうソラの笑い声は嗚咽に変わり始めていた。
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