時空の死神 | ナノ


▼ 2.出会い-後編- (3/10)

「そうか、それでもお前は火影を目指すか…」

「おう、当たり前だってばよ!」

陰りのない眼差しがまぶしい。
その瞳の奥にあの人を見た気がして、イルカは確信した。
やはり、今のソラを救えるのはナルトだけだ。
ぐしゃっとナルトの頭を鷲掴みにして撫でる。

「それじゃあナルト、将来火影になるお前には、やらなきゃならないことがある」

「ん、なんだってばよ?イルカ先生」

予想どおり“火影”の名に食いついてきたかつての教え子。
授業中に見せたことのない集中力を感じたイルカは苦笑した。

「火影は木ノ葉の里を、そして木ノ葉の住人を守る、とても重大な役割だ。それは分かってるな?」

「うーん。で、それで?」

「だからナルト、お前がソラを救え」

「……へ?」

「ソラはもはや木ノ葉の住人だ。ということはだ。お前の守るべき対象でもある」

「…………」

「ソラは、ナルト、お前が救ってやってくれ。お前なら、本当のソラの明るさを、取り戻せると思うんだ」

膝に乗せられた手は固く握られ、口は真一文字に。
しゃべりたいのに、言葉が出ない。
そんなもどかしさがあるのか、口がもごもごと動いてはいるが、最後には開かない。
そんなこんなで三分も経った頃だろうか。
やがてナルトははっきりした口調でイルカの名前を呼んだ。

「イルカ先生」

「ん?」

出来るだけ当たり障りのない反応をする。

「オレ、明日から家に戻る」

「そうか」

「イルカ先生」

「なんだ」

「ラーメン、もう食べてもいい?」

「…いいぞ」

暖簾の向こうでは、門限を過ぎた子供が慌てて走るぱたぱたとした足音と、大声で友人に別れを告げる声がした。
振り向かなくても月が照っているのが分かる。
いつの間にか一楽は満席で、今さらながらお腹が減っていたことに気がついた。

店に入ったときにまだ麺が茹であがっていなかったとはいえ、本来ならもっと早くに提供できていたはずのラーメン。
テウチが気を利かせ出すタイミングを計っていたのだろうか、ナルトはほんの数分前に出されたそれに、話もそっちのけで心を奪われっ放しだった。
これ以上待たせたら、せっかく作ってくれたテウチにも申し訳ない。
イルカもナルトに倣って箸を取った。
今日は二人仲良く味噌ラーメンだ。

「イルカ先生、おかわりしていい?」

「おーいいぞ。だがラーメンを奢るのは今日で最後だからな!」

「やった、ありがとうってばよ!」

明日から食費は一人分に戻る。
イルカの財布が泣くはめにになるのもひとまず今日で終わり。
だから今日だけはたらふく食わせてやろうと、無邪気に喜ぶナルトを見てイルカはそう思った。

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