時空の死神 | ナノ


▼ 2.出会い-前編- (12/15)

「ありもしない世界からやってきたとか言いやがって、本当は自分の里でなんかやらかして逃げてきたんじゃねーの?」

「…………」

「黙ってるってことは図星なんだろ?どーせお前は、後ろめたいことでもしちまったんだろ!?」

ナルトの言葉を聞いて、ソラの挑戦的な目がスッと下がった。
ああ、やっぱり、そうなのか。
そう思った途端、ナルトは抑え切れない感情が己の中に渦巻いていることに気がついた。

こいつ、気に喰わねぇ。

嫌なことから逃げ出して、背を向けて、あげくの果てに嘘までついて、人の里に迷惑かけるこの少女を。
子どもだからといって、簡単に許してなるものか。

「ナルト、いい加減にしろ。オレの言うことをそろそろ信じるんだな。それにだ、オレはこの子の護衛を火影様から仰せつかっている。これ以上なにか言うようなら、任務の邪魔だ、外に出すぞ」

ベッドのそばに立っていたカカシが、動きを見せた。
一触即発だった二人の視界に互いが入らないよう、ソラの前に立ちはだかる。
口調はいつも通りだが、有無を言わせない上司の貫禄が窺える。

「そうよナルト、私だって信じられないけど、ソラさんは本当に違う世界からきたのよ。じゃなきゃ…」

サクラが加勢に加わった。
しかし今のナルトは、好いた相手の言葉だからと、すぐには受け入れられずにいた。
そればかりか、苛立ちを加速させる要因にすらなった。

「なんで、サクラちゃんまで!」

ドンと足を踏み鳴らす、ナルトの肩にサスケが手を置く。

「お前そろそろ認めろよ。何をそんなに意地になってやがる」

「サスケ、お前もかよ!」

「……れ」

「あ!?」

「黙れっつってんだよ!!!」

目を伏せたまま、ソラがいきなり叫んだ。
カカシの後ろにちらりと見えた、スカートを握っていたその手が、今度は拳を作ってベッドに叩きつけられた。

「な、なんだってば――」

「うるせぇんだよ、お前ら」

すごみをきかせた声。

「二次元の分際でが偉そうにぺらぺらしゃべりやがって…
お前、なんで私の世界を否定できる。私からすればこの世界こそが偽物なんだよ。お前のその性格も、私の世界の人が形成した。火影になるとかほざきながら仲間の足を引っ張る落ちこぼれだってことも、全部決められたからそうなってんだよ」

「おま…落ちこぼれだと?」

「そうだよ、お前は落ちこぼれだ。そしてお前の経験した苦しみも、全ては物語を脚色するため、読者から同情を得て興味を引かせるため…お前は私の世界の人が描く漫画の中で、その運命に踊らされてるだけなんだよ。売れなきゃ終わる、そんな世界で悪戯に命を吹き込まれた操り人形だ!!」

我慢ならねぇ――ナルトは無意識に走り出していた。

そして振りかぶる。
その拳をカカシは片手で止め、隙をつかれたナルトは両手を拘束された。

「ナルト、言ったはずだ。オレの言うことを聞けない馬鹿ヤローは外に出す」

バランスを失った拍子に、ナルトの上体がベッドに押しつけられる。
息が苦しくてもがいた刹那、ふと見下すソラが見えた気がして、頭が真っ白になった。
力づくで振りほどいて今すぐ殴りかかりたい衝動に駆られる。
だが捻りあげられた腕は少し動かすだけで悲鳴をあげた。

「ちくしょう、ちくしょうちくしょうちくしょう!!」

身長の低いナルトは、カカシ先生に吊り上げられ宙ぶらりんになった。
せめて足をばたつかせて必死に蹴りを入れるがそれも効果はなかった。
カカシはオレを掴んだまま病室の入り口に近づいていく。

しかしカカシが目の前の扉を開けることはなかった。
その前に外から何者かが開けたからだ。
目の前でガラガラと音を立て扉がスライドする。
その先には、

「すまんかったのォ、カカシ」

紅に呼び出しを頼んでいた、里の長が立っていた。

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