▼ 2.出会い-前編- (9/15)
「馬鹿、違うわよ!」
「ンなわけあるか」
「あいたっ」
サクラとサスケに頭をど突かれ、びしっとキメた指が床を指した。
これだけ二人に言われれば、カカシにも当然怒られるだろうと身構えたナルトだったが、何故かその気配はない。
それどころか、ナルトを蚊帳の外にしたのが気まずかったともとれる発言がされる。
「ま、オレの指示を聞かないで外をうろついていたのは感心出来ないが…ちょうどいい、この子に挨拶してやれ」
カカシは置いていた手をのけた。
それが合図だったかのように、少女は虚ろな表情で下忍たちを見遣る。
その真っ正面にいたのはナルトだ。
黒髪を下の方で二つに結わえた女の子は、それに合わせたように地味な黒い服を着ていた。
忍服のような動きやすさは感じられない、どちらかといえば礼服に近いしっかりした布地だ。
かっちりした上着の下には、長袖のブラウスを着込んでいるらしく、胸元と袖口に白がちらついた。
肌はあまり日焼けしておらず、全体的に白と黒のイメージでまとまっている。
その中で、青い目だけがやけに鮮やかに感じられた。
その目が、涙を拭った後、まじまじとナルトを見てきた。
事態は分からずとも、上司に名乗れと言われたならばと。
ナルトは意気込んでずいと踏み出した。
「オレは将来火影になる男、うずまき――」
「ナルト」
「…え?」
驚くナルトに、少女が淡々と補足する。
「騒がしい男」
「………ぬわあぁアァァにィィィ!?
お前、オレの自己紹介をさえぎるたァ、いい度胸だな!!表に出ろってばよ!」
「あーはいはい。お前の番は終わり。少し黙ってろー」
カカシ先生にしっしと追い払われて、ナルトは仕方なくまくりあげた袖を戻す。
しかし張り上げた怒声とは裏腹に、ぴくりとも反応を示さない少女のことが気になっているようだった。
次にナルトの横をすり抜け、サクラが進み出た。
「私は春野、」
「サクラちゃん」
「…そう、私の名前も知ってるんだ。まあよろしくね、ソラさん」
外交用の笑顔を惜しみなくふりまくサクラは、少女のベッド近くまで寄り、握手をしようと手を伸ばした。
そこをカカシのデコピンで止められる。
「おーい、ちょーっと待てサクラ」
「痛っ!何するのよカカシ先生!」
「そりゃあ、こっちのセリフだ。お前、なんで名前知ってるんだよ、オレもさっき聞いたばかりだ。…聞き耳立ててたろ?」
「えっへーなんのことかな、センセイ」
サクラは、口では否定しながら、しっかりカカシから距離をとった。
「ほい、まあ続きだ」
カカシが先を促すと、残るサスケは鼻で笑った。
「どうせオレの名前も知ってるんだろ?」
こっくりうなずいた少女は、フルネームでサスケの名前を答えた。
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