時空の死神 | ナノ


▼ 2.出会い-前編- (8/15)

***

診察室を出ると、そこには医者と入院患者が何人か行き来していた。
しかし一緒にきたはずのチームメイトの姿はない。

「なんでィ、少しくらい待ってくれても…」

ナルトたち第七班の今日の任務は、迷子のペットの捜索だった。
ランク自体は低く物足りないくらいだったが、よほど家に帰りたくないのかターゲットの猫の悪あがきは凄まじかった。
捕獲時にひどく暴れられ、ナルトは体中をひっかき傷だらけにした。
このクソ猫、と思って苛立っていたナルトも、飼い主に絞め殺されそうになっている猫を見て気分晴れ晴れ。
にやけ顔をはりつけたまま家に帰ろうとしたところ、カカシに呼び止められた。

「ちょっと、その傷はちゃんと手当てしてもらいなさいよ」

「え、誰に?」

ナルトに見られ、すぐさまサクラが怒鳴り声をあげる。

「バカ、病院に決まってるでしょ!!」

ナルトはしきりに平気だと主張したが、カカシから化膿すると困るから病院に行けと何度も勧められた。

そんなやり取りがあった後に、カカシとサクラが病院に向かうものだから、てっきりナルトは治療を待っていてくれていると思っていた。
しかし、サスケも同行すると言い出した時点でおかしいと思うべきだった。

三人は病院に着くなり、すぐさまナルトを診療室に押し込んだ。
なにか怪しいと思っていたら、待合室にはやはりこのとおり誰もいない。
昨日の演習の後も縛りつけたまま帰宅されていたナルトは、唇を突き出し、なーんか感じ悪いってばよ、とつぶやく。

頭の出来の悪いナルトにも、なんとなく三人は病院に用があったのだということだけは分かっていた。
火影への任務報告の前に寄りたい場所があったのだろう。
だとすれば、病院内に目的があったはずだ。
そう見当をつけ、院内を歩き回っていると、二階に上がったところで、さっそくサクラを発見した。

「サックラちゃーん!!」

手を振って近づくと、病室に耳を押し当てていたサクラは、くるっと振り返って怖い顔でひとさし指を口元に当てた。
壁にもたれかかっていたサスケも、険しい表情で睨んでくる。

しかしぞんざいな扱いに耐性のあるナルトは、めげずに二人に近づいた。
サクラは相変わらず聞き耳を立てている。

「あのさあのさ、サクラちゃん。何してんの?」

「ちょっとナルト静かにしてよ。今カカシ先生が…」

「カカシ先生がどうしたんだってばよ?あ、もしかしてカカシ先生の恋人が入院してるとかー!?」

ニシシと笑うと、呆れた様子のサスケが話に割り込んできた。

「ンなわけねーだろ。中にいるのはオレ達と同年代の女だよ」

「じゃあなんで外にいるんだってばよ。見舞いだろ?遠慮なんかしねーで中に入ればいいじゃん」

恋人ではなく、同じ年頃の女の子。
サスケの言う通りなら変に気を遣う必要もなさそうだと、ナルトは思い切ってドアを引いた。

「カッカシ先生ー!!」

しかしナルトがテンションを上げ足を踏み入れると、カカシが今まさに、その少女の頭を撫でているところだった。
そしてなぜかその子が泣いていた。

「…サクラ、お前ちゃんとナルトを見張っとけよ」

「だって先生ー」

サクラが扉の陰からおずおずと姿を現す。
サスケも病室に入ってくる。
二人ともやけに冷静だとは思ったが、前情報なしに直面したナルトには、今の状況がこう見えた。

「これってば、これってば…」

「ん、なんだ?ナルト」

少女を驚かせないよう、なるべく優しく問いかけるカカシだったが、その願い虚しくナルトが叫ぶ。

「カカシ先生ってば、ロリコンだったのか!?」

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