時空の死神 | ナノ


▼ 7.不可避の選択 (8/16)

***

カカシの声に前方を見遣れば、目に飛び込んできたのは、黒い影。
回転し勢いづいた何かが真っ直ぐこちらに向かってくる。

「――ッ!」

全員が伏せ終えると同時に、その影はうなりをあげて真上を通過した。
そして目標を捕らえ損ねたそれはそのまま動き続け、向かいの木に突き刺さる。

それはもはや刀なんて一括りで呼べる代物ではなかった。
例えるならそう、巨大な包丁。
刃渡りはサスケの身の丈ほどもある、そのどう見たって扱い辛そうなあの武器を、敵は軽々と放ってみせた。
それこそ寸分の狂いもないよう、狙いを定めて――。
一瞬反応が遅れていたら、無傷でいられた保障はない。

その悪寒に、サスケは身を似て実力の差を感じた。
先ほどの相手とは明らかに格が違う。

そしてその禍々しい武器の上、音も無く降り立つ不気味な人影があった。
霧隠れの額当てをつけたその人物は、無言でこちらの出方を窺っている。
背をこちらに向けているのは自信の表れか。
息を潜めていたいたときには微塵も気づかなかった殺気が、今は肌を突き刺すように感じられる。

「あいつは確か…」

漏れ聞こえたカカシの声。
数歩、歩み寄る。
それから声音を変えて話しかけた。

「えーこりゃこりゃあ、霧隠れの抜け忍、桃地再不斬君じゃないですかァ」

敵を挑発するようなふざけた物言いだった。
それでも相手は感情を乱さず、背後にいるカカシに隙の一つも見せない。
そしてカカシの発言から、敵の方も名の知れた忍であることが分かった。
だとすれば最低上忍ランク――サスケが冷や汗をかいたそのときだった。
ナルトが急に駆け出した。

あのバカが、とサスケは心の内で叫ぶ。
妙に視線を感じると思っていたら、この状況下でも自分と張り合っていたのだと、そう気がついたからだ。

しかしサスケが止めに入るまでもなく、カカシからの鋭い制止が入る。

「邪魔だ、下がってろお前ら」

低くそう言いながら片手でナルトの行く手を封じた。
予想外の場所からの妨害に、ナルトは驚いて足を止めた。
しかしはっと我に返ると、不服そうに叫び返す。

「なんで!?」

「こいつはこの間の奴らとはケタが違う」

ナルトのはやる気持ちはサスケにも理解できた。
しかしナルトでは、再不斬の早さについていけない。
ソラですら余裕で交わしたあの攻撃を、顔面から地面にダイブしたばかりだった。
そんな反射神経でまともに闘える相手ではない。
そしておそらくサスケですら出る幕ではないのだ。

「こいつの相手となると、このままじゃちとキツイか」

「写輪眼のカカシと見受ける。悪いが…じじいを渡してもらおうか」

頭上から聞こえたその言葉。
サスケは自分の体が強張るのが分かった。
頭の中を駆け巡るのは、恐怖よりも疑問。

まさか、今、奴はなんと言った?

――“写輪眼”、だと?

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