▼ 7.不可避の選択 (7/16)
***
一瞬だった。
だが確実に何かを感じた。
偶然とはいえ、カカシの感じた悪寒の直後にナルトがクナイを投げた。
サクラがナルトをどやしている間、カカシは念のためクナイの刺さった場所を確認しに向かった。
するとそこには、涙を流して失神中のうさぎが一匹。
追いついたサクラが後ろからそれを覗き込む。
「ナルトー!なんてことすんのよ!?」
「うさこう!ごめんよー、そんなつもりはー…」
駆け出したナルトがそのうさぎを抱き上げた。
引きつけを起こしたうさぎは、ナルトに頬ずりをされても逃げる気力さえ残されていないようだった。
敵がいなかったことに安堵しかけていた皆を、カカシだけが一歩引いたところから眺めていた。
あれは雪うさぎだ。
だがあの毛色はなんだ。
白い毛並みは日照時間の短い冬のもののはず。
となると、あれは日の当たらない室内で育てられた、変わり身用のうさぎ――。
さっそくおでましだろうか。
カカシが視線を転じると、ソラがナルトに近づき膝をつくところだった。
久しぶりに積極的に動いているところを見る気がする。
そして背負ったリュックをおろし、中を探りだした。
「何してるの?ソラさん」
「きつけ薬を探してるの。確かこの中に…」
サクラの問い掛けに答えながら動かす手は、震えている。
あのときと同じだ。
平静を装いながら、それでも恐怖を隠しきれていない。
リュックの中を探す手つきも不自然で、一度確認したところをまた確認したりと、どこかいい加減になっている。
「あ、それならオレも持ってたかも」
うさぎを抱えたまま器用にリュックをおろしたナルト。
一目で急いで詰め込んできたと分かるそれの中を、さらに散らかすように掻き回し始めた。
サクラが眉をしかめるナルトのその様子を、しかしソラはちらりとも見ない。
視線は回りに気を配っていない。
じっとリュックの中を見つめ、違うところに意識を集中している。
ソラが集中しているのは、耳だ。
それなら敵がくる前に何らかの音がするはずだ。
ソラでも聞き取れるほどの音がして、姿を見せない何かが襲ってくる。
これは近いうちに戦闘になりそうだ。
そう思った矢先のことだった。
「――全員伏せろっ!」
叫んだ瞬間。
ソラが待っていたのは自分の声だと。
カカシはそう分かった。
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