▼ 7.不可避の選択 (4/16)
それにしても、とサクラが思ったのは、ナルトの発言からさほど時間も経っていない頃だった。
あれだけだんまりを決め込んでいたはずのタズナは、一度話しはじめるとまるでダムが決壊したかのように次々と言葉を並べ立て始めた。
木ノ葉に依頼にきたときは、酒を飲むためだけにあるのではと思ったその口は、今はガトーという男とその男が来たことによりもたらされた深刻な現状を語っている。
その口ぶりに迷いはなく、それがいっそう波の国が悲惨であることを匂わせた。
ガトーが乗り込んできたのは一年前。
財力と暴力を盾に海上交通をあっという間に牛耳られた。
島国国家の要である海上交通を牛耳るということは、すなわちその国の富をすべて独占するということ。
タズナの話から、波の国の人たちが貧しくなり生活が圧迫されただろうことは想像に難くなかった。
「…そんなガトーが唯一恐れているのが、兼ねてから建設中の橋の完成なのじゃ」
橋が完成すれば、海上以外にも交通網が広がる。
そうすれば物流も盛んになり、波の国も栄え、貧困から脱却する。
「そっか、それで橋を作ってるオジさんが邪魔になったってわけね」
「じゃあこの間のあの忍者たちはガトーの手の者…」
サクラに続くサスケの言葉に、今度は首を傾げて何も言わないナルト。
どうやらよく分かっていないようだった。
対するソラは無反応。
事前に知っていた情報にしろ、目の前に座って話さなければならないタズナが不憫なほど反応が薄かった。
背を向けられているサクラには想像しかできなかったが、きっと表情もなかったに違いない。
しかし何も言わない訳は、ナルトとは違う。
ソラはまた何かを考えている。
直感的にサクラには分かった。
何も話さず。
ただひたすらに、考えている。
それはおそらく次に来るであろう敵のこと。
ソラの沈黙は、カカシのそれよりもっと重い。
それはまるでこの先絶対的に抗戦が避けられない事を示しているようで――サクラはようやく里に引き返すことを諦め、覚悟を決めた。
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