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忍足、実は樺地と財前礼子が付き合うことになった。…あーん?付き合うって言ったら、あの付き合うに決まってんだろ、他にどういう意味があるんだ。

「ほ、ほんまにか跡部…」
「ああ忍足、全部夢なんだけどな」
「へー、ほーん…って夢かい!」

KA・BA・JI

「っちゅー話を朝4時から叩き起こされて聞かされたんや。ほんましょーもない話を」

朝5時。俺がこんな非常識な時間に電話をかけてみたにも関わらず、ちゃっかり起きとる礼子ってほんま何者なん。

「ねえ樺地くんって誰?」
「…礼子も人の聞かないんやったな、そういえば」

電話の向こうでんんんーとかえーうとかよう分からん声出して礼子は唸っとったかと思うと、嬉しそうな声でこう言った。

「ダメだ全然分かんない、今日そっち行くね!」
「せやなー…って、今日?」
「よろしく!」

その無駄な行動力はどこから出てくるんや、と呆れる俺の気持ちを分かってほしい。そう、今俺の目の前におるのは正真正銘実物の礼子や。ヤッホーう!なんて言いながら私服で氷帝にズカズカ入ってくる女なかなかおらんで。ほら見てみい警備のおっちゃんめっちゃ見とるで!ちょ、やめ、こっち来んといて!

「つれないよ忍足!久々の再会を喜ぼうよー」
「最近会ったばっかやないか、それも酷い爆弾置いて」
「ああーヤンマー…ぶっニ?それともそ、そげ、ふふ、そげぶのこと?」
「そんな爽やかな顔で言われてもなあ」

はあ、と溜息を一つ吐くと「幸せが逃げるよ」なんて笑われた。自分と知り合ってしまった時点で幸せは逃亡しとるわ。

「で、樺地くんってのはどれ?」
「どれ呼ばわりか、ほら、アイツや」

樺地はコートの中におった。おー珍しくシングルス。後ろで指示する跡部の言うとおり忠実に動く奴や。

「ふむ、激しく昂る鈍色の巨体…」
「本当にお前は中学2年?ってとこやな」
「指を動くとすぐさま動く…!」
「なんとかの王国?」
「…マジで人類?マジで人類!」
「人類やねん」

なんやこれ聞いたことあるなーなんツッコミはいらへんで!ぼーんやりと樺地の動きを見ながら礼子が呟く。

「はあー…確かにカッコイイ…」
「なんなん?自分、ああいうのがタイプなん?」
「忍足より数倍カッコイイ」
「…さいですか」

即答されるとは思わへんかった。ちょっと傷ついたでさすがの俺も。べ、別に悔しいとかあらへんからな!樺地とはイケメンの方向性ちゃうし!ツンデレともちゃうからな!

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