「珍しい客がいるじゃねーの」
「お、跡部!久しぶりー!元気してた?」

これまた方向性の違うイケメンの登場や。今も何故か会って早々そげぶやりあっとるし(礼子、顔の緩みが隠し切れてへんで)ほんま中身が残念すぎるわ。せやけどいつもと比べてどこか元気のない跡部。

「アレレ?跡部、どうしたの?いつもよりおとなしいじゃん」
「…そんなことねーよ」
「うっそー何で何で?」

それ多分夢思いだしとるからや。知っとるか礼子。跡部って樺地おらんと息の仕方忘れるねん。そんなだーいすきな樺地が取られてみい、1時間ぐずぐずされた俺やから分かる。たとえ夢でも、やってこと。めっちゃへこむねんで、ちゅーかまだへこんどるやん、引きずっとるやん。俺がせっかく1時間ぐずぐずに付き合うてやったのに全然意味ないやん、返せ、俺の睡眠時間を返せ。

あ、あかんこと気付いてしもた。礼子これ分かっとるわ。分かった上で"何で何で"言うとるわ。鬼や、ほんまもんの鬼がおる。そして追い打ちをかける鬼。

「ねえ最近私が樺地くんと付き合う夢見たってほんと?どんな夢だった?どんな感じだった?」「そうだな…、手を繋いで」「うんうん」「付き合うことに…なりましたって樺地が…」「ぶっ」「?」
「何でもない、何でもないよ続けて…」

ターゲットが俺やなくて良かったなんて見てると、ゆったりとしたスピードで巨体が跡部の後ろに現れる。

「…跡部さんをいじめないでください」
「別に、いじめてたわけじゃないけど?」
「…」

樺地はほんま何なんやろうか、跡部に洗脳でもされとるんとちゃうかって時々思うてしまうわ俺。無垢な瞳で礼子を見つめる樺地。何か言いたそうに礼子はするけど、何故か何も言わへん。なんでや、見つめられとるからか?急に下向いてわなわなと礼子が震えだす。

「…何それ…」
「どないしてん」
「見た目だけじゃなくって…中身もイケメンなの…!?」

何やねんそれ、一体何に感激しとるんや礼子。

「なっ、やっぱり…!」

跡部なん泣きそうになっとるし。やっぱり礼子、樺地のこと…っちゅーことか?いやいやいや、ないわ。なんやねんこれ、この状況。せやけどかなりおもろいでこのシチュレーション。俺が人知れずわくわくしだしたところで礼子がバッと顔を上げる。

「はあ…、確かに樺地くんはイケメン、申し分のないカッコよさ…!でも、でもね…私みたいなひねくれた女にはもったいなすぎる!」

樺地くんは私にはもったいない宣言である。なんちゅー宣言やねんそれ。で、自分のことひねくれとる自覚あったんやな。なんや安心したわ。

「樺地くんのことは諦める。だから跡部、樺地くんのこと、頼んだからね…!」

ちゅーか狙ってたんか!ほんでもってお前は誰なんや礼子。樺地の何なんや。

「ハッ、当然だ」

何が当然なんだ跡部。謎の説得力残しとるんは認めざるをえんけどな、せやけどその返事はどうかと思うで。

「じゃ、私帰るね!またよろしくー!」
「ウス」

何がよろしくで何がウスなん。俺にはもう全く理解できへん。
意外にも、あっさりと爽やかな笑顔で駆けていく礼子。そもそも、礼子は何しに来たんや結局。まあええか。跡部の機嫌ようなったみたいやし。ふう、と本日何度目か分からん溜息を吐いて歩き出す。

歩き出してすぐの木の下で腹抱えて笑ってる礼子がおった気がするけど、放っておくことにする。目の錯覚や目の錯覚。

「ぶっ、あのときの忍足の顔…」

って、笑われてるの俺なん?あかん、このままにしとったら余計なことを誰に言われるか分からん!ずるずると礼子を引きずってとりあえずカフェテリアに向かおう。おいしいコーヒー奢ったるからもうそれ以上笑わんといて!跡部の話とか樺地の話とかもしたるから!


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