信じられないものを見た。跡部さんが高笑いしていて(しまったこれはいつものことだ)忍足さんがそれを見て号泣している。何なんだこの状況は…説明を求めて周りに視線を送るが誰も何も言わない。どういうことだ。何が悲しくて忍足さんは跡部さんを見て号泣なんかしている。

「跡部…お前最高や!お前程最高な奴見たんは初めてや…!」
「ふん、当然のことだ」

え、何その会話。どういう意味だその会話。この状況でどうしてそんな言葉が出てくる。忍足さんが泣いているのは悲しいからではなく感動したからだでもと言うのか。それにしてもそんだけ号泣されると流石に引く…いや、何でもない。

「跡部、頼む!もう一回やってくれんか!俺はこの感動をきちんと脳裏に刻み付けたいんや…!」
「ふ、仕方ねぇな。もう一回だけやってやる。しっかり見ておけよ」

なにをするというのか。

「俺様の美技に酔いな…いくぜ!」

♪      ヤンマーニ
 ♪  (ゝ、  ヤンマーニ
ー=y ((ノりヾヽ ヤンマーニ
  \(゜д゜从  ヤーイヤー
  ノノ|y |\y=‐
   / へゝ
   ~く~~~~

  ♪
♪  _(ゝ
  γノノ~り) y=‐
  从゜д゜)/ ヤンマーニ
ー=y/| y|  ヤンマーニ
   <へ \ ヤンマーニ
    ~~~>~  ヤーイヤー

な ん だ こ れ
もうあれだ、言葉も出ない。跡部さんは一体何をしている?ヤンマーニってなんだそれ、跡部さんに一体何があった?何か嫌な事でもあったのか、いやしかし何故忍足さんはあれを見て感涙できる?もしや得意気になっている跡部さんを見て影で嘲笑っているのか、忍足さんは実はお腹真っ黒だったりするのか?

「完璧や…こないに完璧で美しいヤンマーニを見たんは初めてや…!」

あ、これ違う。本気で感動してる。
はらはらと涙を流す忍足さんを見て思わず一歩後退る。うわぁこの人、マジ泣きだ。なんでこれで泣けるんだこの人、ひょっとしてこんなアホな動きなのに実はとてつもなく重大な意味でも込められていたりするのか?部長になるにはあの動きが出来ないと駄目だったりするのか?俺もあれ出来るようになったほうがいいのか?背筋に冷や汗が流れる。どうしよう、やりたく、ない。しかし跡部さんができるんだ、次期部長たる俺ができないなどとは言えない。それに俺の座右の銘は「下剋上」、跡部さんができることが俺にできないはずはない!

きっ、覚悟を決めて拳を握る。やってやれ日吉若、お前はやればできる!意を決して跡部さんに向かって歩き出す。

「跡部さん!」
「あーん?なんだ日吉」
「俺にも、それを、教えてください!」

ざわ、周りの連中が騒ぐのが聞こえる。だが知るか。俺にはこれを覚える義務がある…!

「…いいぜ日吉。よく見てろよ」
「はい」

ヤンマーニヤンマーニ。歌いながら動きの説明をする跡部さんをしっかり見つめながら頭の中に動きを刻み付ける。ヤンマーニヤンマーニ。単純そうに見えて複雑な動き、流石は跡部さんだ。だがしかし、下剋上してやる!

♪      ヤンマーニ
 ♪  (ゝ、  ヤンマーニ
ー=y ((ノりヾヽ ヤンマーニ
  \(゜д゜从  ヤーイヤー
  ノノ|y |\y=‐
   / へゝ
   ~く~~~~

  ♪
♪  _(ゝ
  γノノ~り) y=‐
  从゜д゜)/ ヤンマーニ
ー=y/| y|  ヤンマーニ
   <へ \ ヤンマーニ
    ~~~>~  ヤーイヤー

やがて2人で踊り出した俺と跡部さんの周りにはたくさんの人垣が出来ていた。最前列ではらはらと涙を流しながら拍手する忍足さん、釣られて拍手をする周り、そして広がる拍手喝采。俺はちょっと泣いた。





「礼子、これちょっと見てみい。ウチの部長と副部長が踊ったんやけどな?」
「ぶっ…!なっ、にこれどういう状況?ふ、ははははははやばいおもしろすぎるっ…!」
「この間お前跡部にヤンマーニ教えたやろ?俺、跡部のヤンマーニのあまりの完璧さに号泣したわ」
「真顔、2人とも真顔とか…っ!あっははははは、は、ああお腹痛いっははははははは!」

(倉井様よりいただきました!)