真田を探して早十分。俺にこんな時間の無駄遣いさせるなんてなかなかやるじゃないか真田、もうあとは教室くらいしか思い当たるところがない、これでいなかったときには―――、早足で廊下を歩くと、目的の教室から話し声が聞こえた。

「誕生日、おめでとう真田!」
「ざ、財前…俺の誕生日を知っていたのか…!」

なんでよりにもよって財前礼子と一緒にいるんだよ!俺は真田、と出掛けた声を抑える。あああ関わりたくないのに!関わりたくないのに!
それにしても楽しそうで何よりだね、仲睦まじくて何よりだね、全く!
そういえば真田、二十一日が誕生日だったっけ。すっかり忘れていた。基本的に人の誕生日だとか覚えないしなあ。余計なところで女子らしいところを見せやがって財前礼子め。

「あっ、でもね、私誕生日プレゼント持ってくるの忘れちゃって…」
「む、そのようなもの、必要ない」
「だから代わりに―――」

財前礼子が動く。バッと手を広げたかと思うと真田に抱きつきに…抱きつきに!?何考えてんだあの女!ウブで純情な真田にそんな攻撃は…っていやいやいやしかしここで出て行ったら負けだ負け!

「ま、待て俺たちまだそういう仲では」

ほら見ろやっぱり真田狼狽してる!思いとどまれ元に戻れ!
って待て真田何お前こっそり抱きしめようとしてるんだおいこのムッツリ!いい加減にし…叫ぼうとした瞬間、事件は起きた。

「うっ」

と真田が声を上げたかと思うと突然前かがみに倒れていく真田。あーあ俺見ちゃった、スローモーションで見えちゃった。財前礼子が真田の鳩尾にグー入れてるの。

「セクハラ、だめ、ぜったい!」

にっこり笑う。待て待て待て、お前から手を出したくせに何言ってんだ!そして財前礼子は、前に倒れ膝を床についた真田の頭に足を乗せる。

「改めて誕生日おめでとう。ねえ、嬉しい?」

嬉しい訳あるか!何だそのバイオレンスな感じ!いい加減真田が切れてもおかしくないぞそれ!むしろ切れろ!怒れ!わくわくして見ていると、真田が顔を徐徐に上げていくのが見えた。とは言え足で踏まれているので限界があったらしく、一定のところまで上がると停止した。そしてこう叫んだのだった。

「たまらんスパッツだ!」
「ふーふっふ!存分に楽しむが良いよ!」

あーなるほど、確かにスカートの中見えるよね、その格好。うん、良い感じに覗けるよね。俺、今までずっと我慢してたけど、もう良いよね、もうゴールしても良いよね。だって今言わずしていつ言えば良いのだろう、うん俺正しい、絶対俺正しい、だって神の子だし。というわけで、言わせてもらおうか。

「どうしてそうなるんだよ!」