「革命じゃ!!」

叫ぶのは構わんが、革命っていったい何ぜよ…、堪え切れずふきだすところじゃった危ない危ない。

俺は今、U-17合宿に来とる。シングルスでエロ紳s…じゃなかった柳生に負けてから俺は、崖登りをやらされたりスポーツマン狩りなるものに参加させられたり、それはそれはもう「おい、テニスしろよ」とつっこみたい気持ちでいっぱいじゃったが、まあなんとかここまでやってきた。一時はどうなることかと思った。負け組が集められたときの空気のままじゃったらどうしようかと思った。あんな空気はこりごりじゃ。だけどここからどうするつもりなんじゃ、その、具体的に。みんなでぞろぞろとコートに向かう途中、俺は考える。

「…革命って何するつもりなんじゃ」

ぼそっと呟いた言葉が聞こえていたらしく、むっと眉を寄せた真田と目が合ってしまった。

「なんだ仁王、情けないぞ」
「しかしのう真田、俺らは確かに強うなった。じゃがこれだけで奴らに勝てるようになったと思うんか?」
「…」

勝ち組には化け物がごろごろいる。正直、革命と言われたところでいまいちピンとこないのが現実じゃった。そう、今、この瞬間まで。

「俺に心当たりがある」

コートに着き、立ち止まる。キリッとした顔で、急に真田が言った。なんじゃ、何するつもりなんじゃ。嫌な予感…いや、違う…これは…!この男、何かしでかすつもりじゃ!

「俺は…この合宿に来る前にある言葉を教わった」
「ほう。して、その言葉とは?」
「む、違うな…言葉だけではなく…動きも合わせて…」
「ん?」

「  いいぜ ヘ(^o^)ヘ
        |∧
        /
てめえが
何でも思い通りに
出来るってなら
         /
      (^o^)/
     /( )
    / / >

   (^o^) 三
   (\\ 三
   < \ 三
`\
(/o^)
( / まずは
/く そのふざけた
   幻想をぶち殺す」

「…」
「…」
「…」

何やっとんじゃ真田、お前さんそんなキャラじゃないじゃろ。しかもそのポーズのまま固まるとかありえんじゃろ。…ぶっ…やばいぜよこれは俺の腹筋が八つに割れちまうぜよ!しかもみんな立ち止まったあとじゃったせいで注目の的じゃ。みんな一様にぽかーんと口をあけている。ジャッカルはキラキラした眼で見とるがな。

「キエエエエエイ!」

しかもあろうことかキエエエイて…なんじゃその掛け声…おかしいじゃろ、おかしいにもほどがあるじゃろ…。俺もう頬の筋肉が限界じゃ。ぷるぷるしてるのがばればれじゃろうなこれ。が、ここでギブアップしたらきっと後悔する。そうじゃ、俺が聞かねば誰が聞くんじゃこの凍った空気の中で!

「…さ、真田…それは…?」
「そげぶだ」

ぶっ、やばい腹筋が八つどころじゃない十以上に割れちまうぜよ、どんだけ俺をムキムキにさせようとしとるんじゃ真田あ!

「真田さん…」

ほら見てみい東のスーパールーキー越前もぷるぷるしとる。これはみんな腹筋崩壊寸前と違うんか?

「カッコイイ!」
「ぶっ」

おかしいじゃろー!それおかしいじゃろー!なんなんすかそのポーズありえないッスくらいのことを言うじゃろ普通!っつーかそうつっこんでくれんと俺の腹筋がやば…、

「そうか!」
「…うっ…!」

なんでそんな嬉しそうなんじゃ真田!

「か、かっこええやん!」
「…苦し…ぶっ」

西のルーキー遠山も興奮気味じゃ。おいそろそろ誰かつっこまんか!

「やっぱりそげぶはカッコイイよな!」
「ぶはっ」

ジャッカルうううお前だけはまともであってほしかっ…ああ全国大会でそういややっとったなあこいつ、あああ思い出したらまた腹筋が…!なんか脇腹まで痛くなってきた。

「俺にも教えんかい!」
「俺も!」
「俺にも!」

みんながわらわらと真田に集まる。

「良いか!一寸のズレも許さんぞ!」
「おー!」

「では、行くぞ…!まずはこうだ!いいぜ」

いいぜ、という掛け声でみんなが一斉に腕を上げたところで俺の腹筋は崩壊した。もう駄目じゃ、見てられん面白すぎるじゃろ。ぶっ、もう…ダメじゃ限界じゃ…!

俺は走し出した。スピードスターも真っ青な走りじゃ。こんな大笑いしとるとこ誰かに見られたらペテン師の名は返上せないかんからのう!
そして俺は、みんなの一糸乱れぬそげぶを遠くから眺める作業に…。

「違う!そうじゃない!それでは財前の教えとは程遠いぞ!」

ああ犯人は財前礼子じゃったか。イトコにあたるらしい財前光が何か勘付いたらしく、そげぶのポーズを取りながら「ああ…」と漏らしたのを俺は見逃さんかったぜよ。苦労するのう。大丈夫じゃ、お前さんに責任なんてこれっぽちもないぜよ。犯人は礼子。ぶっ…くくく、ぶ…さ、さすが礼子良い仕事するのう!ぶっ…あはははは!

「ちがーう!手首の角度がなっとらん!」

これは記念に撮っておくしかないじゃろう、って、手がブレブレじゃ…いかん…これは綺麗に撮れ…ぶっ、その、そのポーズのまましゃべるな真田…ぶっ、み、みんな真面目に何やっとんのじゃ誰かつっこまんか!あっ脇腹吊ったいたた…ぶっ、いた、ぶはっ!くく…!いた…ぶっ…!

勝てる。これなら勝ち組に余裕で勝てる。今、一筋の光が見え…ぶっ…見え、見えたぜよ!



翌日礼子に写メを送ると、光の速さで電話が掛ってきた。

「何これ!何なのこれ仁王!」
「一糸乱れぬ美しいそげぶじゃ」
「あっはっは!おかしい!なんでみんなこんな綺麗に揃ってるの?」
「優秀なコーチがおったからのう」
「ぷっ…ぷぷぷ…」
「聞いとらんなら切るぜよ」
「他に写真あったら全部送って!」
「任せんしゃい」
「あっははは!ひー苦しい!私の腹筋ムキムキになっちゃう!」
「俺はもうなったぜよ」
「ぶっ、お気の、お気の毒に…くくく…」

携帯の向こうで礼子の腹を抱える様子が簡単に想像できた。まあ昨日の俺を想像すれば易いことじゃ。良い仕事したのう、俺。