財前礼子の機嫌が悪い。
「なんかあったんか」
基本的に礼子は何かを企んでニヤニヤしとるか、なーんにも考えてないかどちらかだ。よって、こうして昼休みにわざわざ屋上で片肘ついて「はあ」なんて溜息吐く姿を見てしまったときには、ついつい興味がわいてしまうというのも仕方ない。
「え?何、聞いてくれるの?」
それにしても、ムスッとした顔を向けるなんて本当に珍しい。あんまり怒哀を露わにしない人間のはずなのに。
「…まあ良いや勝手に話す」 「おう勝手にしんしゃい」 「私、毎月楽しみにしてる雑誌があるんだけど」 「プリッ」 「いつもの店に売ってなくて、別の店に行ったの。そしたらその店にもなくて、次も、その次もなくて結局買えてない読めてないって訳」 「それは運が悪いのう」 「私何か悪いことでもしたかしら」
(柳生が聞いたら泣くんじゃろうなあ、それ)
あっそういえば柳生が「全く財前礼子腹立たしい!あんな人、罰が当たれば良いんですよ!」と憤っていたのを思い出した。そうやって反応するから礼子が面白がるというのに。まあ俺も面白いからアドバイスなんてしんけど。むしろ、ここは礼子にアドバイスをかけるべきだろう。
「柳生の呪いじゃ」 「は?」 「最近柳生にちょっかいかけとるから」 「あー…、ああ…そっか、柳生の…、フフフッハハハハ待ってなさい柳生!」
ニヤリと笑ったかと思うと、礼子はずかずかと走り去った。喜楽は相変わらず分かりやすい。
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財前礼子の機嫌が良い。 (今日も何か面白いことがありそうじゃ、あーめでたしめでたし)
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