ああ神よ、私のいったい何がいけなかったのでしょうか。財前礼子に目をつけられたばっかりに人生はめちゃめちゃです。くそっ、眼鏡か!この眼鏡がいけないのか!
「眼鏡さん、私の何がいけないというのですか…」
教室で一人、椅子に掛けて眼鏡に問いただす私。まあ誰も見てないでしょうし、と油断したのが間違いでした。
「あーあ、柳生に眼鏡とおしゃべりする趣味があったなんて…」
現れたのは財前礼子、出たな元凶!
「これもばらしちゃおうかなー」
恐ろしいことをにやにやしながら脅してきます。冗談じゃありません。そんなことまで広められたら、『エロ紳士、友達は眼鏡』なーんて騒がれることになってしまいます。思わず立ち上がって私は財前礼子に叫びます。もう今更紳士がどうこう言っている場合ではありません。
「やめてください!」 「じゃっ、ジャンケンしよう!」
何か恐ろしい命令でもされるのかと思えば、財前礼子の口から飛び出したのはジャンケンという言葉でした。運に任せたゲームですね、臨むところです、断る理由はありません。断ったところで何を言われるか分かりませんしね!
「いいですよ」 「やった!いっくよー!最初はグー!」
あれ、おかしいですね。ジャンケンって痛いものでしたっけ。思いっきりグーで腹を殴られています。みぞお、これ鳩尾に入ってます!
「ジャーンケンポン!」
体勢の低くなった私に向かって、更にかかと落とし。アレ、これってジャンケン?ジャンケンっていう名前の別の格闘技なんじゃないですか?
「私がチョキで柳生がパーだから私の勝ちだね!」
うつ伏せになった私の肩をぐりぐりと足で踏みつける財前礼子。もうやだこんなのジャンケン詐欺です!
「ねえ柳生。ほら、これが、良いんでしょ?」
この女、本格的に話が通じないらしい。私が何も話さないからってぐりぐり足で踏まれるのが良い訳ないでしょう!ですがここで歯向かってもややこしいことになるのが目に見えています。私はやけになって本日二度目の叫びをあげました。
「ええ!いいですとも!」
すると瞬間、ガラッという音が。教室の扉を見ると幸村君がポカン、とした表情でこちらを見ていました。そして勢いよく扉を閉め、って、あれ、これ完全に誤解してますよね。私そんな趣味無いですからね!弁明すべく立ちあがろうとすると、もう一度勢いよく扉が開きました。
「ジーザス!」
幸村君はそう叫ぶともう一度扉をガラッと閉めました。呆気に取られていると、幸村君が駆けていく軽快な足音が聞こえました。
ああこれで弁明のチャンスも!仲間もなくなったわけですね!
後に残ったのは財前礼子の高らかな笑い声。おお神よ。まだあなたがいるというのなら、どうかこの女にジャッジメント、聖なる裁きを与えたまえ!!
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