1 今日は待ちに待った同人誌即売会、いわゆるイベントの日である。実際に、こうして参加するのは初めてのことになる。今まではレポを見たり、サンプルを見るだけで満足していたけれど、やっぱり行ってみたくなったのだ。 気合いを入れて始発電車に乗り、がたんがたんと揺られ会場へ向かうとそこには既に列が作られ始めていた。プロのオタク怖いです。一人泣きそうになりながら最後尾へと向かう。並んで、ふう、息をついたところで、目の前の後頭部には見覚えがあることに気付いた。 「…忍足?」 「お、自分も一般参加か」 予想通り、やっぱり忍足侑士だった。振り向きざま、イヤホンを外す忍足。その手を追った先には携帯ゲーム機があった(私が話しかけたからか電源は落としたようで何をしていたかは定かではない)。 「ゲーム?」 「他にやることないやろ」 「えっ、今から配置図に書きこみを」 「アマイで!」 マーカーを出し、配置図を広げた私にビシッと指をさす忍足。人に指をさしちゃいけないって教わらなかったのだろうか、なんてツッコミはさておき。 「甘いって、何が…」 「これや!」 忍足が証拠品よろしく私に差し出したのは、えらく完成度の高いサークルチェックリストだった。サークル名、ナンバー、そして新刊の表紙の画像が貼りつけられ値段、さらにサイズまでご丁寧に書かれているではないか!そして、配置図は色分けまでしてマーカーが塗られている。ある程度のチェックは私だってしてきたつもりだったけれど…、コイツ…いや、…この御方…、できる…! 「忍足…」 「なんや?」 「弟子にしてください」 「ならば俺を師匠と呼ぶことや」 「師匠…」 「なんや?」 「…」 「…」 「忍足師匠!!」 【次へ】 ![]() |