アメーバ柳生3
「私は柳生、よい学校生活にしましょうね」 「私は柳生、ジェントルマンと呼ばれています」 「私は柳生、何かお困りのことがあれば聞いてください」
次々に自己紹介をはじめるジェントルマンたち。いや、違う。柳生さんたち、と言うべきだろう。どういうことだろうこのクラス。全員柳生さんなんて、そんなの、そんなのおかしいじゃない!っていうか気持ち悪いんだけど!運命の再会果たすかもわくわく、ってレベルじゃないんだけど!なんで同じ顔した人間がこんなにいるわけ?おかしいでしょこんなの!
「あの、ちょっと、ゴミが入ったみたいなんでちょっと目洗ってきます」 「ええ、戻り次第貴女の自己紹介を聞かせてください」
なんてこった、転校先の学校は予想以上に濃い学校だった。っていうか柳生だらけの学校だった。おかしい、おかしすぎる。いや?もしかしたらこれはドッキリなのかもしれない。みんな同じマスク被って転校生を驚かせよう!的な…、一筋の希望が見えてきた!よーし、私だって驚かせてあげるんだから!インパクトのある、かつちょっと電波漂う自己紹介で!
改めて扉をガラっと開ける。
―――柳生さんが二倍に増えていた。
いや、二倍以上だろう。ただでさえぎゅうぎゅうだった教室はもはや人の入るスペースなんてないほどに柳生さんでいっぱいだった。なにこれ?悪い夢?悪い夢なの?
「あ、帰ってきましたね。では、自己紹介を」 「私の名前は柳生。ただの人間に興味はありませんがアメーバにも興味はありません。あと、朝の柳生さんはいますか」 「貴女も柳生というのですか!奇遇ですね、私も柳生です」 「私も」 「私が朝の柳生です」 「私も柳生です」 「おや」 「まあ」
何がおや、まあ、なのか全然意味が分からない。て、いうか、なんで増えたの?本当にアメーバなの?単細胞分裂的な?あーやだその瞬間想像しちゃった!眼鏡から増えるのだろうか、それとも七三の分け目から新しい柳生が…あっ私の名前も柳生なんだった!紛らわしい紛らわしいよこれ!
私はこの100人くらいいる柳生さんの中から朝の運命の柳生さんを探してみせる。それでやるんだから!「あーあんたは朝のジェントルマン!」って!
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