絆の強さ




「じゃぁこのお母さんのピアスが…メガストーンってものなの?」


「あぁ。当時はそれが何なのか判明していなかった時代だから、とりあえず大事にしておこうとお父さんとお母さんで大事にしていたんだ。」



父から聞いたことからするに、バシャーモがメガシンカ出来たのは、ずっとシアナが大事に付けていたピアスのお陰らしいことが分かった。
元々これはシアナの母親のものだが、実はその母も祖母から譲り受けたものらしく、なんの石だか分かっていなかったそうだ。


「お母さんのおばあちゃんってことは、私にとっては曾おばぁちゃん…ってことだよね…凄い…」


「でも博士、それでは説明がつきませんよ。バシャーモがシンカするにはバシャーモ専用の物もないと…」


「あ、そうか。確かバシャーモナイト?って物が必要なんでしたっけ?」


そんな物持たせた覚えがないシアナは首を傾げる。
一体どこでそんな貴重な物を持っていたのだろう?
しかしバシャーモに確認したところ、確かにバシャーモナイトを大事に持っていたのだ。


「バシャーモ…それどこで手に入れてたの?」

「それは僕が渡していたんだよ。」


皆が声のする方に振り返れば、そこにはすす汚れたボロボロの服を着たユウキとダイゴ、そして息を切らしたアスナが部屋に入って来たところだった。


「シアナ!遅れてごめん!」


「アスナ!来てくれたんだね…ありがと!」


勢い良く抱きついてきたアスナをシアナが抱き締め返すと、おじさんも元気そうで本当に良かったと涙目で言うアスナにシアナは感謝の言葉しか出てこなかった。



「ユウキ君も、無事だったんだね!本当に良かった…!」


「いやーボロボロですけどこの通り元気ですよ!」


そう言うと彼は腕をブンブンと振り回して見せた。
怪我もないようで一安心だ。
他の皆も安心したのか笑顔を見せている。


「ダイゴくん、と言ったね?バシャーモナイトを渡したと言ったが…」


「あ、はい。僕が渡しました。それから挨拶が遅れて申し訳ありません。」


ダイゴはそう言うとシアナの父に深々と頭を下げて挨拶をした。
それから説明をしてくれたのだが、なんと以前シアナとダイゴが行った流星の滝でバシャーモがダイゴの気に入った石を発見したため、バシャーモナイトと交換したと言うのだ。どんな石かは内緒らしいが。


「彼女のバシャーモはバトル向き…と言いますか、彼女を守る事を1番に考えているようなので、僕が守れない時に少しでも何か役に立てばいいと思って。」


それに仕事上、こういった関係の珍しい備品は手に入り易いんですとダイゴは少し困ったように苦笑いした。


「わ、私の知らないところでそんな事が…って、バシャーモ?」

「……」


シアナが話しかけても黙ったまま明後日の方向を向いて立っているバシャーモは、自分から勝手にボールに戻ってしまった。



「話の流れから恥ずかしかったのかもしれないね。きっとシアナちゃんを守ろうと必死になってくれたんだろう。本来はポケモンとパートナーが一心同体になって初めて出来る事だからね。」


これこそが人間とポケモンの絆!なんてグロリアスなんだっ!と自分の世界に入りそうなミクリ。
むしろもう入っているようなので触れずにそっとしておいた方が彼の為だろう。


「…バシャーモは、私との約束をしっかり守ってくれていたんだね。」


「…お父さんと、バシャーモが?」



なんでもシアナの父はマツブサに連れていかれる時に、家の外まで必死に追いかけてきた当時のアチャモとある約束をしたらしい。









(アチャモ、お父さんは必ず、どんな手を使ってでもシアナの元に帰るよ…正直、この様子だといつ帰れるかは分からない。だからお願いだ…それまでシアナを守ってやってくれないか…不甲斐ない父で、すまないな…)



(チャモッ!!チャモチャモッ!!)







「あの泣きっ面なアチャモが…あんなに強くなってシアナを守ってくれていたんだな…」


「…バシャーモ…っ!ありがとう…!」



話を聞いたシアナは嬉しそうにバシャーモの入ったモンスターボールを抱き締めた。
恥ずかしそうにカタカタと少しだけ揺れるボールを見つめて、自分は知らない間にこんなにも周りの人に守られていたのかと申し訳なさと嬉しさで胸がいっぱいになる。



「とりあえず今日は皆ゆっくり休んでくれ。人数分宿は取っておくよ。」


話が落ち着いたのを見計らってミクリがそう言うと先に宿へ行って話を通してくると部屋を出ていった。きちんと話は聞いてくれていたようだ。



「じゃぁ僕も宿へ行っているよ。何かあったらいつでも呼んで?」


「ありがとうございます…ダイゴさ…あ。」


癖が抜けないのか先程言われたことを忘れていつも通りに答えてしまったシアナにダイゴは笑いつつも頭を撫でてなるべくでいいよと言った後、扉に手をかけた。



「あ、待ってくれダイゴくん!…後で話がしたい。いいかな?」


「え?あ、はい。そしたら後で部屋に伺います。」


「ありがとう。」



それじゃぁ、また後でと軽く挨拶をして出ていくダイゴを見送った2人は何時間もお互いの今までの話を親子水入らずで語り合った。

シアナが初めてコンテストで優勝したこと、アチャモが進化した時のこと、今でもアスナとそのご両親と仲良くしてもらっていること。


そして大切な好きな人に出会えたこと。


沢山、本当に沢山のことをお互い話していたらあっという間に夜になってしまった。

そろそろ宿へ行こうとポケモンセンターから出て、2人で宿への道を歩いている時、シアナは気になっていたことを父に聞いてみた。



「そういえばお父さん、ダイゴさ…ダイゴと何の話をするの?」

「ははは。お父さんも父親らしいことをしたいんだよ。」


ご飯を食べたらダイゴくんを私の部屋に呼んで来てくれるかい?と父に頼まれ了承したが、話の内容は誤魔化されてしまったようだ。
何の話か気になるが会ったばかりだし悪い話ではないのだろうと考え、シアナは父と共に宿への扉を開けた。



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