甘い朝*鬼灯
「水蓮、起きなさい」
低くて心地よい声が私を起こす。
ゆっくりと目を開けると、眩しい朝日の中に、愛しい人の顔が見える。
「…おはようございます、鬼灯様」
「おはようございます」
「今日はお休みではなかったですか?」
「久しぶりの休みです
二人でどこか出かけましょう」
私の夫、鬼灯は閻魔大王第一補佐官。
地獄の鬼のトップに立つ方。
当然、お仕事も忙しくて。
お休みは年に数える程度。
そんな貴重なお休みは大抵寝て過ごされるか、お休みなのにやっぱりお仕事をするかのどちらか。
だけど、今日は違った。
貴重なお休みなのに、出かけよう、と言う。
「鬼灯様、貴重なお休みですよ」
「貴重だからこそ、ですよ
このあとしばらく休みはないですから
貴方との時間も取れなくなる」
「でも、お疲れなのにそんな…」
「私のことはいいんです
たまには旦那に甘えなさい」
そう言って、私の唇に人差し指を当てると、早く着替えてきなさい、と言って部屋を出て行った。
「鬼灯様!!」
「準備できましたか
どこにいきましょう」
「鬼灯様が行きたいところに、行きたいです」
「今日は貴方のお願いを聞こうと思ってたんですけど…」
「鬼灯様の行きたいところに連れて行って欲しいんです」
朝から晩まで仕事漬けの彼との会話は夫婦と言えど決して多くはなくて。
私は鬼灯様のことがたくさん知りたい。
「これが私のお願いです」
鬼灯様が呆れたような顔で私を見る。
やっぱりまずかっただろうか。
「水蓮…」
「はい?」
鬼灯様の整った顔が近づいてくる。
唇に触れる暖かい感覚。
「キスの時は目を閉じるものですよ」
「………鬼灯様ぁ!」
自分の顔がどんどん熱くなっていくのがわかる。
照れ隠し半分、八つ当たり半分で、鬼灯様をポコポコ殴ると、すんなりその手は鬼灯様のそれに包まれて。
「獄卒の方から聞いた甘味処、行ってみたかったんですよね」
時刻はまだ朝の8時。
甘い甘い朝のはじまり。
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