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「疲れた…」


寝巻きに着替えた水蓮は、ドサッとベッドに倒れこんだ。
お香と鬼灯と三人で閻魔庁へ行った後、引き継ぎだなんだと地獄を鬼灯に連れまわされたのだから仕方がない。


「あのクソ鬼神…
絶対わざとだ…」


シーツをギリギリと握る水蓮の手には血管が浮き出ていた。


「それはそれは光栄ですねぇ」


嫌味なバリトンボイスに即座に振り向くとやっぱり鬼灯で。
飛び起きた水蓮は布団を頭からかぶり丸まった。


「ノックくらいしてください
私が着替えてたらどうするんですか〜」

「私は気にしませんが」

「馬鹿なんですか」


はぁ、と水蓮は大きなため息をついた。
そして、今度はどんな嫌がらせをされるのかと頭をフル回転させたが、彼の口から出た言葉は意外にも嫌がらせとはほど遠かった。


「まぁ、それは置いといて
一杯いかがですか」

「わざわざ買ってきたんですか?」

「まさか
大王の買いだめから頂きました」

「泥棒〜」

「いつも迷惑かけられてるんだから、これくらいいいでしょう」


少し考えたのち、飲みたい衝動に負けた水蓮は棚からグラスを二つ取り出し、軽く水でゆすいでテーブルに置いた。
鬼灯は酒瓶をテーブルに置いて、ドサッと座った。
何も言わず、水蓮は酒を注ぐ。
しばらく沈黙の中、酒を交わした。


「……今日は疲れましたか」

「そりゃ疲れました
帰ってきて早々補佐官やることにされて〜
うざい神獣に絡まれて〜
大好きな人には会えたけど〜
そのあと地獄中連れまわされましたから〜」

「わざとですよ」

「知ってますよ〜」


特に笑いあうわけでもなくただ黙々と酒を交わす。
付き合いが長いせいか、二人の間に会話は少ない。


「…鬼灯は身を固めたんですか」

「いえ」

「この何百年、なにしてたんですか」

「仕事です」

「色気のない人生ですね〜」

「貴方もどうせ旦那いないでしょう」

「異国の男性との国際婚には興味がなかったもので」

「同国の男性だったら結婚するんですか」

「いい人がいればの話ですよ」

「そうですか」


この会話も、探り合いに聞こえるかもしれないが、特に中身はないのだ。




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