まほうで親世代

※シリウスBDネタになります。



「はいシリウス! 君は明日辺りに死にます!」
「何でだよ!」

休日の平和な談話室。ビシッと指を突き付けて宣告してやると、シリウスは私の頭にチョップをかましてツッコんできた。

「あ、今のチョップで死期が今日に早まった」
「明らかに適当じゃねぇか!」
「適当じゃないよ。さっきその辺に転がってたビー玉を水晶玉に見立ててやってみた占いの結果です」
「キリッとした表情で言ってっけど、それがつまり適当ってことだからな!?」
「ああ、そっか…シリウス…」

私の横で、ジェームズが悲しげな表情を浮かべた。

「明日でお別れなんて…」
「違うよジェームズ。今日だよ、今日」
「あ、そっか。間違えた。……コホン。今日でお別れなんて…」
「いや死なねぇから!」
「パッドフット、君のことは忘れないよ」
「話聞けよ。……おい、リーマスもピーターも零もエバンズも! そっぽ向いて他人のフリしてないで何か言ってくれよ」

その言葉に、リーマスが呆れたような顔をした。

「シリウス、いつ何が起こるかなんて、誰にも分からないんだよ?」
「なぁそれつまり俺死ぬかもって言いたいのか? そういうことなのかリーマス」
「騒がしいわよブラック」
「エバンズお前言うに事欠いてそれか!」
「きっと大丈夫だよ、シリウス……た、多分」
「ピーターそこは断言してくれよ!? ……あれ!? 零は!?」
「シリウスの墓前に供える花買ってくるって」
「どいつもこいつも!」

頭を抱えて騒ぐシリウスは、正直とても近所迷惑だ。
私はシリウスの肩に、ぽん、と優しく手を置いた。顔を上げたシリウスに、にっこり笑ってサムズアップ。

「来世があるさ」
「明日はねぇのかよ!」

もうお前ら嫌いだ! 特になまえ! と、子供のように叫んで、シリウスは談話室を出て行った。
残された私たちは、アイコンタクトで頷き合い、自分のやるべきことに素早く取り掛かった。







消灯時間ギリギリ。談話室には既に誰もおらず、暖炉の炎だけがその周辺を朧げに照らし出していた。
入口から入ってきたシリウスは、予想外の暗さに一瞬足を止めた。が、すぐに暖炉の目の前のソファに行って腰掛けた。同時に、「はぁ…」と小さなため息を吐いた。

…ハイ、3、2、1!

パッと、談話室の電気が点く。驚いて顔を上げたシリウスに向かって、物陰から飛び出したみんながクラッカーの紐を引いた。

「「「HAPPY BIRTHDAY! シリウス!」」」

唖然とした表情のシリウスの顔に向かって、ジェームズがホールケーキをぶつけた。

談話室にはみんなの歓声と、クラッカーの中に入っていた何かよく分からん魔法の玩具の音で、一気に騒がしくなった。

「おめでとう!」「イケメン!」「好き!」「チキン野郎!」「チキン!」「大事なことだから」「二回叫ぶよ!」「おめでとう!」「俺にも女を紹介してくれぇ!」「黙れ!」「結婚して!」「あっ私も!」「私も私も!」「このご時勢に一夫多妻…だと!?」「とりあえずおめ!」「おめでとう!」

グリフィンドール寮生が口々に叫ぶ中、シリウスは顔面ケーキ塗れで突っ立っていた。

「ケーキの味はどうだいパッドフット? 結構甘さ控えめなんだけど」

ジェームズがニヤニヤと問い掛けた瞬間、シリウスが叫んだ。

「……おっ前らぁぁぁぁ!」
「本日の主役がご乱心だー!」

きゃーきゃー、とみんなで笑いながら騒ぎ立てる。

「怒んなよシリウスー、イケメン台なしだぞー……あっ既に生クリーム塗れだからダメだ」
「うるせぇなまえ! つーかお前俺が誕生日だって知ってたなら何で変な予言してきたんだよ!? 昼間から気分最悪だったわ! ちょっと本気でビビってたんだからな!?」

ちょっとは信じちゃってたのか。かわいいなコイツ。

「えーと……嫌な気分、朝からじゃなくて良かったね?」
「違う! そこじゃねぇ!」
「…仕方ないじゃん、シリウスを談話室から追い出さないといけなかったからさー」
「開き直った! つーか他にやり方あるだろ!? 不吉すぎる!」
「あー……じゃあアレだ。誕生日を迎えた君はまた新しく生まれ変わるんだよ的な」
「結局適当!」
「そんなことよりさ、ほら、すごくない? 部屋の飾り付け。みんなで頑張ったよ? 魔法使わないで」

みんなが手作業で装飾した談話室は、すごく綺麗というわけではないけど、頑張った感が滲み出ている。言うなれば、高校の文化祭みたいな。頑張ってる感じ。

シリウスは杖を振って顔に付いたケーキを消し、辺りを見回した。……ああ、生クリームで視界悪かったのね。

「…もう何なんだよ! お前ら大好きだ!」

シリウスの叫び声に、談話室中が歓声を上げた。

そこからはもう誕生日パーティーなど名ばかりの、どんちゃん騒ぎの宴会だった。それでもシリウスが誕生日なことに変わりはないので、彼の周りには常に人がいた。

その人の波が引いた頃、ようやく悪戯仕掛人と私はシリウスに近付けた。

「や、シリウス。お疲れだね」

引っ切り無しにみんなに話し掛けられていたシリウスは、少し疲れたような顔をしていた。

「疲れた時には甘いものだよ、はい」
「……わざとだろ、リーマス」

あ、バレた? と悪びれもせずに言ったリーマスは、差し出したチョコをそのまま自分の口に入れた。

「…本当はね、悪戯仕掛人と私だけでささやかにお祝いする予定だったんだけどね」

私の言葉に、シリウスが驚いたような顔をした。それに、ジェームズが笑って続けた。

「それなのに、僕ら五人でサプライズの計画立ててたら、みんなが自分もシリウスを祝ってやりたいって言い出してね」
「それで、こんな大掛かりになっちゃったんだ」

ピーターが笑った。

「みんな、シリウスのことが大好きなんだよ」

私が言うと、シリウスは一瞬泣きそうな顔をした。


「…俺、グリフィンドールに入れて良かった」


小さく呟いたシリウスの言葉をバッチリ聞き取った私たちは、顔を見合わせて笑った。

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