まほうで元の世界withリーマス

今日は、リーマスと一緒にホグズミードにやってきた。ハリーの誕生日プレゼントを買うのに付き合ってもらうためだ。レギュラスに頼もうかと思ったんだけど、奴め「嫌です」とにべもなく断りやがった。呪ってやる。

「いやー、助かるよ。年頃の男の子の欲しいものなんか分からんからさー」
「私ももう年頃の男の子ではないんだけれどね」

リーマスが苦笑する。

「年頃の男の子だった時代があるだけいいじゃん。私にはそんな過去はなかった」
「あったら困るよ」

そんな会話をしながら、ゾンコのお店の中を二人で物色する。

「うわ見てリーマス。これ懐かしくない?」
「あ、本当だ。まだ売ってたんだね」
「それにあっちのとかも……ほら、シリウスが」
「ああ…もう、怒ったフィルチの顔しか思い出せないよ」

そんな思い出話に花を咲かせていた時。狭い店内を走り回っていた子供が、勢いよく私の腰にぶつかってきた。

「だわっ」
「え?」

いきなりのことにバランスを崩した私は、目の前にいたリーマスに向かって倒れ込んでしまう。ちょうどリーマスは下の方の商品を見るために屈んでいて、そんな体勢で私を支えきれるはずもなく。

二人仲良く商品棚に突っ込んでしまった。





「いったぁ…ごめん、リーマス、大丈夫?」
「…なまえ」
「え?」

呆然としたリーマスの声に、私も手をついて起き上がる。と、明らかに周りの景色が違っていた。

ゾンコの店内にいたはずなのに。目の前には道路があり、多くの車が行き来している。通行人たちは、道の真ん中で転んでいる私たちを迷惑そうに避けていく。

「……」
「……」

私たちは顔を見合わせて、

「「…ここ、どこ?」」

同時にまったく同じ言葉を吐き出したのだった。







とりあえず、道に座っているのも邪魔だろうと、立ちあがってアテもなく歩き始めた。

しばらくしてから、私はようやくあることに気付いた。

「……ここ、日本だ」
「え?」

今更だけど、両側に連なる店の名前はすべて日本語で書いてあった。なんで気付かなかったんだ。バカか。

「本当?」
「うん。あと、多分だけど…」

首を傾げながら辺りを見回す。
なんとなく、見覚えのある景色。

「多分、何?」
「私の知ってる場所だと思う」
「……え?」

ぶっちゃけ気持ち的には十年以上前だから、あんまり覚えてない。てへぺろ。

「じゃあ…別世界の日本ってこと?」
「リーマスからすればそういうことになるね……とりあえず、行こうか」
「…何処に?」
「私の家。ここからだと多分ちょっと遠かったはずだけど、歩けない距離じゃなかったと思うから…」

おぼろげな記憶を頼りに歩き出す。確かこっち…、

「家?」
「うん、両親いるし。今頼れんのあの二人しかいないからさ」
「なるほどね…」

そんなことを話しながら歩くも、やっぱりリーマスはマグルのものが物珍しくて気になるらしい。きょろきょろと興味深そうに辺りを見回している。

「リーマス、その辺ちょっと見てく?」
「え?」
「気になるんでしょ?」
「…いいの?」
「うん、いいよ。どうせいつ戻れるかもわかんないし」

私がそう言うと、リーマスは表情を明るくした。…かわいい。
さっそく彼はすぐ側の家電量販店に入っていく。携帯やパソコンなどを見て目を丸くして、そのたびに私に「なまえ、あれは何だい?」と尋ねてきた。
私の説明を聞いて、感心したように頷いては「逆にこっちの方が魔法みたいじゃないか」と呟いていた。マグルからしたら、やっぱり魔法の方がすごいんだけど。

ひとしきりいろいろと見回って、リーマスは満足したらしい。

「それじゃあ、そろそろ行こうか」
「ああ、時間とらせてごめんね」
「いいよいいよ。気になるんだったらまた来よう」
「本当に?」
「うん、家電以外にもいろいろあるよ。それにリーマスは、日本も初めてでしょ?」
「そうなんだ。来てみたいとは思ってたんだけれど」
「じゃあ案内するよ。この辺はちょい田舎だけど、渋谷とかはもっとすごい人いるから」
「シブヤ?」

リーマスに日本の色々を話しつつ家路を歩いていると、いつの間にか家についていた。

「ここが我が家です」

指を差して教えると、「へえ…」と家を見上げるリーマス。
私はそそくさと扉に近づいて、小さく「アロホモラ」と唱えた。カチャ、と鍵の回る音がする。……うーむ、開かなくても困るんだけど、なんだか家のセキュリティが心配になってきた。まあ、魔法使いが来ることなんてないか…。

「リーマス、開いたよ」
「ああ、うん」

リーマスを呼んで、家のドアを開く。「ただいまー」と一歩足を踏み入れた瞬間。

「えっ」
「お邪魔しま……あれ?」

そこは、ホグズミードの入り口だった。思わず、リーマスと顔を見合わせる。

「帰ってきた?」
「…みたいだね」

あっさりしすぎて、拍子抜けだ。リーマスも、何ともいえない表情をしている。

「…まあ、うん。よかったね。大事にならなくて」
「…そうだね」

自分に言い聞かせる。なんか…いや、まあいいんだけどさあ…。

「えっと…、私ら何してたんだっけ」
「…ハリーの誕生日プレゼントを買いに来ていたんじゃなかったかな」
「そうだ。それだ」

じゃあ、行こうか。とリーマスと一緒に歩き出す。

「買い物終わったらさ、どこかでお茶しよう。それで、いつ日本に行くか相談しよう」
「え、日本?」
「え? 私案内するって言わなかったっけ?」

驚いたような声を出されて、私も驚く。
あれ…さっきそんな話してなかった? 渋谷とか原宿とか、行ってみようって話したよね…?

「…本当に案内してくれるのかい?」
「あれ? もしかして、本気じゃなかった? うわ、えっとごめん」
「違うよ、そうじゃなくて!」

リーマスが慌てたように手を振る。

「……じゃあ、お願いしてもいいかな」
「…こちらこそ!」

私が笑うと、リーマスもうれしそうに笑った。
いつになるかはわからないけど、今からもう楽しみだ。

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