本番で十年後ザンザスとクリスマス

クリスマスが今年もやって来ました。リア充と呼ばれる皆さんも、そうではない皆さんも、如何お過ごしですか? クリスマスということで、街は家族連れやカップルで賑わっているようですね。

そんな中、もちろん私は絶賛ぼっち引きこもり中だ。そして、ひと冬の契りを交わしたmyこたつさんと愛を確かめあっている。彼はいつも暖かく私を迎えてくれるジェントルメンであり、「冬の間は絶対に君を離さないぜベイベー」と言わんばかりの熱い男なのだ。

「君が人間でイケメンなら、きっとモテるだろうにねー…」

板に頬擦りしながら呟く。板はひどく冷たかった。これがツンデレか……。

カーテンの閉まった窓を見て、思わずため息を吐く。
我が家にサンタが来ないことは分かっている。悲しいことに、私には恋人がいないからだ。

恋人はサンタクロース。

当時サンタは親だと信じきっていた私にとって、それは物凄い衝撃だった。

ただ疑問なのは、サンタクロースが恋人になったのか、恋人がサンタクロースになったのかということである。
前者なら、サンタをモノにしたその人が幸運だということで話は終わる。けど、もし後者ならば……、もし私に彼氏が出来たとして、私にとってはその人が、その人にとっては私がサンタクロースだということになる。つまりリア充は皆サンタクロースだということになってしまう。サンタの異常大量発生だ。普通にこわい。

「トナカイの数足りるのかな…」

ぼんやりと呟いた。…まあ空が飛べるくらいなんだから、分身だって出来るんだろうな。何てったってトナカイだし。

さて、冒頭ではクリスマスがやって来たとは言いつつも、本当のジーザス・クライストの誕生日は明日だ。でもイヴの今日も休みだ。さすがはジーザス。当日だけでなく前日までも支配下に置くとは。侮れん。まあ、そのお陰で休みが増えるわけで、キリスト教徒じゃない私だけど、ジーザス様々と称えたい。
せっかくだし、もう他の祝日にもイヴを作るべきだと思う。建国記念日イヴ、勤労感謝の日イヴ、大晦日イヴ、元旦イヴ。…あれ、それただの大晦日じゃん。

それにしても暇だなー…と考えていると、不意に家のチャイムがなった。
こんな聖なる夜に一体誰だろう。友達はみんな「彼氏とデートなの」と幸せそうに言っていたので、友達という線は薄い。なら宅配便かな。クリスマスイヴにまで仕事か…大変だなぁ。コーヒーでも差し入れてあげたい。

「はーい」

しつこく鳴るインターホンに、早足で玄関に向かい、扉を開ける。
そこには、サンタが1人と、トナカイが一匹立っていた。

「あれ、ベルくんにフランくん、こんばんは」
「おす」
「どーもー」

サンタの格好をしたベルくんと、トナカイの格好のフランくんだった。ノリノリなのはベルくんだけで、トナカイの格好で赤い鼻をつけたフランくんは無表情で「何でミーがトナカイなんだよ堕王子しね」と呟いている。頭からは二本の角と、三本のナイフが生えていた。相変わらずびっくり人間なんだなあと思った。

「ふたりとも何してるの?」
「ししっ、プレゼントを拐いに来たんだよ」
「え?」
「メリークリスマース」

ベルくんがサッと大きな白い布袋を取り出した。驚いた私を、フランくんが袋に押し込む。

「ぎゃあ!?」
「はーい、ちょっとだけ我慢しててくださいねー」







何だか長い時間担がれ運ばれ、やっと袋の口を開けてもらえた時、目の前にいたのはザンザスさんだった。

「えっと、…メリークリスマスです、ザンザスさん」
「何してんだ」

呆れたみたいな顔をしながらも、私を袋から出してくれた。

「サンタさんとトナカイに拉致されました」
「……ハッ、カスどももたまには役立つじゃねえか」

小さく笑って呟いたザンザスさんは、私を軽々と抱えあげると、大股で部屋を横切り、キングサイズのベッドに私を下ろした。
続いてザンザスさんも倒れこんできた。ちょうど私が押し倒されるような形になったわけである。

「ザンザスさ……わぶっ」

何事かと尋ねようとすると、ぎゅっと頭を抱え込まれるように抱き締められた。息が苦しい。もしかしてザンザスさんは私を殺す気なのだろうか?

「大人しくしてろ」

もぞもぞと動いていると、頭上から眠たげな声が掛かった。
最小限の動きで何とか気道を確保し、ザンザスさんに尋ねる。

「あの…私何で連れてこられたんですか?」
「あ? 知らねーよ」

知らないとな? じゃあザンザスさんが呼んだわけじゃないのか? 何で突然イタリア来た? そう言えばコタツつけっぱですけど大丈夫なんです? 電気代が…というか火事になってたらどうしよう…。

悶々と考えていると、今にも寝てしまいそうな声でザンザスさんが言った。


「サンタが連れてきたんだから、お前がプレゼントなんだろうが。いいから寝ろ」


それだけ言うとザンザスさんはすぐに寝息を立ててしまった。早い…のび太…。

まあ、私がプレゼントだというならば致し方ない。こたつさんのことは忘れて、ザンザスさんの腕の中で大人しく寝ることにした。

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