cLosed番外
いつも座っている屋上のフェンス。
今日はそれよりも高い位置にある、給水塔の上に行ってみることにした。
縁に腰掛けてみれば、いつも見ている並盛町の景色にプラスして、誰もいない屋上が目に入る。
何となく、空以外のものが見えるのが嫌で、一度瞼を下ろした。
すぐに目を開いて、今度は寝転がってみる。面が狭いから膝から下は縁からぶら下げて、仰向けになった。
学校で一番空に近いこの場所で寝ると、視界には大好きな空しか写らない。少しだけ嬉しくなって、思わず頬が緩んだ。
だけど、何かが足りない。
そのまましばらく空を眺めていると、不意に視界に影が入り込んだ。
「…こんなところにいたの」
いつも聞いている声が、頭上から響いた。逆光で表情はわからないけれど、多分呆れ顔なんだろう。
「…ここに寝転ぶと、視界全部が空になるんです」
「ふぅん」
気のない返事をして、少しだけ空いているスペースに雲雀さんが腰を下ろした。
沈黙の間を、ゆっくりと雲が流れていく。
右から、左へ。
それが視界から消える頃、私は口を開いた。
「……私死ぬときは、空を見ながら逝きたいなぁ、って思うんです」
「…へぇ。それで?」
私が上半身を起こすと、雲雀さんがこっちを振り向いた。
「そのかわり、生きてるうちは、できるだけ雲雀さんのこと見て、目に焼き付けておきたいんです」
笑った私に、目を丸くする雲雀さん。
「だから、これから先……できれば私が空に逝けるまで」
あなたの側にいてもいいですか。