雨色プラスチック | ナノ
「やっほー」

その日もまたブルーベル様のトレーニングを手伝っていると、扉が開いて笑顔の白蘭様が入ってきた。

「びゃくらん!」

顔を輝かせたブルーベル様はトレーニングを中断し、白蘭様に駆け寄った。私も深くお辞儀をする。

「や、ブルーベルもなまえちゃんも元気みたいだね」
「びゃくらん、仕事は?」
「とりあえず一区切りついたとこだよ」

それを聞いたブルーベル様は、嬉しそうに白蘭様に話し掛ける。彼を本当の兄のように慕っているのだろうということが、言葉の端から伺えた。
最初、白蘭様は私を姉代わりにと仰ったけれど、私がどんなに頑張ってもこの二人のようにはなれないだろうと思った。

「それで、どう? 一週間経ったけど」

白蘭様が何気なく言った一言に、内心びくりと震えた。

「ブルーベル、どうする? やっぱり世話係いらない?」

……まあ異動は免れないだろう。けれど、クビだけは勘弁して貰えないだろうか。私はまだ死にたくはない。
内心祈るような気持ちだった。

だが、ブルーベル様の答えは予想とは違った。

「ううん、いる!」
「…ぇ」
「そっか。仲良くなれたみたいで安心したよ」

白蘭様はそう言って、ブルーベル様の頭を撫でた。彼女は嬉しそうに笑う。
それから二人で軽く会話をし、白蘭様は仕事に戻られた。その背をぼんやりと見送ってから、ハッと気がついてブルーベル様に向き直る。

「…あの、ブルーベル様」
「何よ」
「宜しかったのですか?」
「…何が?」
「先ほどの、世話係のお話です」

ブルーベル様は、一瞬驚いたような顔をしてから、キッと私を見据えた。

「何? 不満なわけ?」
「いえ、そんなことは」
「なら良いでしょ! なまえはブルーベルの部下なんだから! ブルーベルが決めたことに大人しく従うの!」
「…は、はい」

正直、ブルーベル様には嫌われていると思っていたから、これは嬉しい驚きだった。絶対に、必要ないと言われると思っていたのだ。
どんな理由かは分からないけれど、凄く嬉しいことだ。

…それに、名前も呼んで頂けた。

ブルーベル様は照れたように顔を背ける。その表情は年相応の可愛らしいものだった。

「わかったら筋トレの続き! 早く!」
「はい」

誤魔化すように叫んで筋トレのスペースに戻るブルーベル様に、バレないように笑みを零した。
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