ハネウマらいだー | ナノ
  7.5C


ツナに呼ばれて、数ヶ月振りに日本に来た。最近は、何だか忙しかったからな…。仕事も溜まっていて、実際出掛けてる場合じゃないんだが、可愛い弟分の頼みを断るわけにはいかねえからな。
……にしても、ツナが俺を呼ぶなんて珍しい。一体、何の用なんだ?

考えながら、ツナの家に向かう途中、あの土手を通った。
道に迷った時に、手を繋いで歩いたことを思い出した。


『今まで、ありがとうございました』


脳裏に、なまえの泣きそうな笑顔が蘇る。

…………あれが、最善なんだ。なまえにとって、1番いい選択だったはずなんだ。なまえみたいな子を、俺たちの殺伐とした世界に巻き込んだらダメだ。

「……あれで、良かったんだ」

自分に言い聞かせた。


俺自身が決めたことに、俺が傷付くなんて許されない。







「よぉ、ツナ! 元気にしてたか?」

ツナの部屋のドアを開けた瞬間、懐かしい蹴りが飛んできた。

ドガッ

まともに受けて、床に倒れ込む。

「痛ってー! り、リボーン、いきなり……!?」
「何やってんだ、へなちょこ」
「……っ!」

リボーンが怒っていた。
思わず息をのむ。

「な、何って…」

ボコッ

「いてぇ!」

殴られた。

「何すんだよ!」
「お前は成長しねーな」
「な、な…」
「救いようもねーくらい自分勝手だ」

リボーンにだけは言われたくなかった。

「だから、何の話だよ!」
「なまえの気持ち、考えたことあんのか」

思わず目を見開いた。

「っ……そんなの、」

一瞬だけ、言葉に詰まった。すぐに息を吸い込んで叫ぶ。

「……っずっと考えてたに決まってんだろ!」

リボーンは無表情で俺を見据えた。

「それで、関わらないことにしたっていうんだな?」
「…そうだよ」
「なまえがそれを望んだって、思ったんだな?」
「……仕方ねえだろ。危ない目に遭わせたくねーし、他に方法がないんだ」
「…ハッ」

リボーンは鼻で笑った。

「そんなんだからお前はいつまでたってもへなちょこなんだ」
「な…」
「巻き込みたくない? お前は逃げてるだけだろ」
「…ちが」
「違うのか? 逃げてないのか? なまえを守ることを理由に自分を守ろうとしてるだけだろーが」
「……」
「好きな女も守れねー奴がマフィアのボスなんて、とんだお笑いだな」
「ちょっ、リボーン、落ち着けって」

言い返せない俺に、ツナが見かねたように間に入った。

「……あの、ディーノさん。ちょっと聞いてもらえますか?」

そのまま、ツナは真面目な顔をして俺の前に座った。

「最近、なまえは元気がないんです」
「……」
「ぼんやりしてることが多くなったし、得意な数学でイージーミス連発するし、歩いてて壁に頭ぶつけたりするし」

無言の俺を気にした様子もなく、言葉を続ける。

「誰が見ても変だってわかるのに、アイツは優しいから、ツラいのを隠して笑うんです。……正直、見てて痛々しいくらいなんですよ」
「……俺のせい、で?」
「そんな、別にディーノさんのせいじゃ…」

ツナが、慌てたように手を振る。

傷つけたのか? 俺が?
でも、確かに最善の選択のはずで、……俺は何を間違えた?

真面目な顔をしていたツナは、一瞬表情を和らげた。

「俺となまえは物心つく前からの付き合いで、家族みたいな存在なんです。…大切な、家族なんです」
「……」
「だから、幸せになってほしい」

心の底からの言葉。

「今、なまえを笑わせられるのは、ディーノさんだけなんです」
「……」
「お願いします」

ツナは、まっすぐに俺を見ていた。

「ディーノさん、」
「悪い……俺、ちょっと行ってくる」

ツナの部屋を飛び出した。
最後にリボーンが、「手間かけさせんな、へなちょこが」と言っていたのが聞こえた。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -