教科書を朗読するクラスメートの声を聞き流しながら、窓に切り取られた空をぼんやりと眺める。
両親が死んで間もないことを知っている先生は、気遣わしげに私を見るだけで何も言わなかった。


空は、くすんだ青色をしていた。

小さい頃に家の窓から見た空と、同じ色だった。

「『ああ、寒いほど独りぼっちだ！』…」

やる気のなさそうな声が読み上げるセリフ。


お話の中の彼は狭い岩屋に閉じ込められて、広い世界に焦がれた。

でも、私は───

広い世界なんていらなかった。
何も知らずにいれば、虚無感も何も感じることはなかったのに。


抜けるような青も、
くすんだ青も、
曇天のグレーも、
涙のような雨も、
朝焼けのオレンジも、
夕闇の藍も、
星空の暗闇も、


何にも、知らなければよかった。

無意識に俯き、唇を噛み締める。

「…大丈夫？」

心配そうにたずねてきた隣の席の友人に、「大丈夫」と作り笑いで答えた。

寂しさを、押し殺すことに必死だった。