Beckon Blue
両親が死んだ。交通事故だった。強い風が吹く日だった。通夜があって、葬式があった。私は1人ぼっちになった。家が少し広くなった。
久しぶりに空を見た。
忙しくて悲しくて、ずっと下ばかり見ていた。
空を見上げたら、無性に屋上に行きたくなった。
雲雀さんもいればいいなあ、と思った。
屋上の扉を開けた。
誰もいなかった。
少し落胆したけど、いつものフェンスに座った。
いい天気だ。弱い風が吹いていた。
久しぶりの感覚に、ひどく安堵した。
両親がいなくなった今、私が安心できる場所が減ってしまった。
「あーあ…」
涙が出た。
私は1人だった。
両親は空に帰ったのだ。
羨ましいと思った。
ふと空を見上げた瞬間、突風が吹いた。落ちそうになった。
『おいで、』
両親の声が聞こえた気がした。
幻聴だと分かっていた。
分かっていた、のに。
見上げた空に、初めて恐怖を覚えた。