Rainy Blue
雨が降っていた。
「今は授業中だよ」
聞いたことのある声が聞こえた。
「……また君なの」
「また私です」
呆れたような顔をする雲雀さんに笑いかける。
「今日は雨だよ」
「わかってます」
「傘差してまで屋上にいたいの?」
「はい」
「…なんで?」
「空が見たいから」
今日も屋上のフェンスに座っていた。制服も靴下も上履きも濡れてしまった。
「雨雲で見えないのに?」
「雨空だって、空ですよ」
快晴の空の色をした傘をくるりと回す。
「風邪引くよ」
振り返ると、雲雀さんは傘を差していなかった。
「雲雀さんこそ引きますよ」
傘を傾けて雲雀さんの頭上に翳すと、雲雀さんは驚いたような顔をした。
「君は変だね」
雲雀さんだって、十分変わっている。
「……名前は?」
「みょうじなまえ。1年B組です」
「ふぅん」
雲雀さんは興味なさ気に頷いて、小さな声で「覚えておくよ」と呟いた。
「…何ニヤニヤしてるの」
「別に何も」