No Blue
暗闇の中で、ずっと誰かが名前を呼んでくれていた。目を開けた。
視界に写ったのは空じゃなかった。
「なまえ、」
「酷い、顔してますよ。…雲雀、さん」
「………うるさいよ」
何日も寝てないかのような顔をした雲雀さんは、私の手を握っていた。
「心配、してくれてたん、ですか……嬉しいです」
「なんで、飛び降りなんかしたの」
険を含んだ声色で訊ねられた。
「呼ばれた気が、したんです」
「…何言ってるの」
「両親が、死んでから、ずっと」
視界が滲んだ。
雲雀さんが驚いた顔をしたように見えた。
「ずっと、死ななきゃいけないような、気がしてて、それで」
目尻から溢れた涙は重力に従って耳の方へ流れた。
すごく不快だった。
「ずっと、怖くて、1人で」
「……」
「飛び降りたら、楽に、なれるかなって、思っ…」
突然引き寄せられて、上半身を起こされた。そのままぎゅうっと抱き締められた。痛かった。
「雲雀さん」
「もう2度と心配させないで」
「……すみません」
「……」
「…雲雀さん?」
寝息が聞こえた。思わず笑ってしまった。
病室の窓からは空が見えなかった。
雲雀さんの体温を感じながら、声を殺して泣いた。