馬鹿なの?



「ふっふー、残念でした〜」

 美好はニヤリと笑うと、そのままスライドを使って焔華の剣を弾き飛ばした。

「さて、これで君は逃げられなくなった訳だが、どうする?僕はまだ覚醒したばかりでよく分かんないけど……多分こっちとしては、君から色々と聞き出したりしなきゃいけない気がするんだよねぇ。ね、香野?」

 焔華に向けて切っ先を突きつけながら、美好は背後に振り返った。

「確かに俺らとしてはその方が都合がいいな。……まぁ、そいつが大人しくついてくるとは思えないが」

「僕もどうかーん。でもここは騒ぎに気付いた二人が来るまで待ってた方が……」



「本当に甘いわね」



「!」

 低く呟かれた焔華の声に美好が前に向き直るが、そのタイミングに合わせたかのように突如、焔華の周りに巨大な炎柱が沸き上がり彼を包み込んだ。

「なにこれ、熱っ!」

 慌てて美好はその場から跳び退ると、香野の横に着地した。

「全く、アンタ達って本当に馬鹿なの?こんなに簡単に私を捕まえられるとでも思った?」

 紅く目を光らせ炎柱の中から出てきた焔華に対し、香野は「やっぱりな」と呟くと、続けて、

「確かに、お前程の神憑が安々と捕まるとは思わないさ。何か秘策でもあったってか?」

「あら、もしかしてやっぱりバレてた?あれほど家で留守番してなさいって言ったのに……。ほら、出てきなさい杞微(キビ)。もうバレてるわよ」

 焔華は背後の森へ振り返った。




  



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