不平不満



 会議室の中は、以前香野らがノルンの国へと旅立つ時よりも格段に明るく、そして賑やかになったように思えた。

「それで、貴公がその王国の王子という訳か」

「あぁ、遡琉だ。本来ならこういった軍事以外のことはいつも弟に任せているんだが……あいにくあいつは今手が離せないんで、代わりに俺が挨拶に来た次第だ。……しかし……」

 『総』の席に座った元帥の正面の席に着くこととなった遡琉は、あいさつもそこそこに途中まで何かを言いかけたのだが、何か引っ掛かることがあるのか眉間に皺を寄せながら目を細めた。

「本当にお前みたいな“子供”がここの最高責任者なのか……?」

「なっ……!」

 彼は自分よりも明らかに年下の元帥を見て首を傾げるが、一方の元帥は子供扱いされたことに不興したのか“子供らしく”頬を膨らませた。

「わしはお前さんより遥かに長生きしておるぞ!まぁ、確かに今は転生して間もないためにこんな姿じゃが……それでも換算すれば……」

「おーい、ジジイ。そんなのどうでも良いから早く会議やっちまおうぜー」

「だから香野!まだジジイ呼ばわりされる歳じゃないと何度言えば分かるのだ!」

「……」

 早速飽きてきたらしい香野の言葉に元帥は怒声を放つ。

 この時、遡琉は分かった気がした。やはり騎士団の最高位に立つこの男はまだ“子供”なのだと。




  



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