「ふむ、君もなかなかやるようだね。さすがに僕も疲れてきちゃったよ」
そう言いながら焔華の剣撃を避ける美好の顔はまだ涼しい。
「ちょっと、アンタさっきから避けてばっかじゃないの!少しはまともに戦ったらどうなの!」
時には霧となり、また時には無数の蝙蝠に変化し、美好は的確にそれらを避けていく。
「うーん……それもそうだねぇ。んじゃあ、そろそろ本気といきましょうか!」
鮮やかに相手の攻撃をかわした美好は、そのまま後ろへ跳びずさり焔華から距離をとった。
するとその突如、彼の周りにどこからともなく現れた赤い物体が浮遊を始め、まるで意思を持ったかのように体の周りで不気味に蠢く。
――あれは何……?
その物体は美好の手元に急激に集束していくと、未だブルブルと震えながらも確実にその形をかたどりはじめていく。
「ねぇ……あんた、なめてんの?」
「なめてる……なにを?」
「だってそれ……」
「あぁ、これ?」
焔華が睨み付けるように美好の手元に目を向けると、彼はそれを自慢気に肩に担いで見せた。
「戯遊の祝典(ギユウのセレブレーション)、それがこいつの名前さ!」