ピシッ
ごうごうと燃え盛る火の中、美好は微かに残った意識を取り戻した。
――あぁ、旦那様はどこにいるのだろう。
彼女は這いつくばるように廊下を移動して行くが、炎が道を塞いでていて中々前に進むことが出来ない。
ピシッ
――もう、私はここで死ぬのかな……
ピシッ
――無事に香野様が逃げて下さっていれば、助けを呼んでもらえるだろうか。
ピシッ
しかしまた少し進んだところで彼女は力尽き、倒れ込んでしまった。
『嗚呼……実に、実に綺麗だ……』
――何かが、聞こえる……?
『やぁ、やっと会えたね』
「あなたは……?」
突然どこからか聞こえてきた声に、美好は手放しかけた意識を取り戻し、問いかける。
『大丈夫、安心して。僕は君。さぁ、思い出すんだ。僕らの記憶を』
「記憶……?」
なにかが崩れる音がする。
視界が霞む。
「そうだ、私は……」
そこで、美好の意識は闇に落ちた。