真っ赤な夜陰



「世話になったな」

「いえ、こちらこそ。あまりお役にたてずに申し訳ありませんでした」

 美好は少しだけ目を伏せながらそう言うと、まだ何かを迷っているかのようにして視線を左右に迷わせる。

「あぁ、いや、大丈夫だ。でももしまた何かあったら……いや、やっぱなんでもない。それじゃ」

 香野は歯切れ悪く別れを告げると、そのまま屋敷を後にした。

 そして彼は歩きながらにチラリと振り返ると、今一度屋敷の全館を確認する。

 ――あいつ……何かを隠しているのか……?だが、ここには神憑の気配は何も……

 そう思案した彼が前に顔を戻したその時、

「!?」

 突然すさまじい轟音と爆風が後方から吹き荒れ、彼の周りを通過する。

「なっ……!?」

 驚いた香野が振り返ると、そこには今さっきまで自分が捜索をしていたはずの鈴梦の屋敷が、炎を上げて辺り一面を赤く染め上げているのであった。




  



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