少女との再開



「もしもーし、すいませーん。誰かいますかー」

 無事に屋敷へ到着することの出来た三人は、ひとまず中へ入ろうということで、屋敷の門をくぐることにした。

 しかし、先ほどから香野が扉の前で声を張り上げてみるものの、中から誰かが出てくることも、声が聞こえてくるということも全く無く、一行はまさにお手上げ状態だった。

 そしてしばらくそうしていたせいか、香野のイライラが格段に高まっていくのも目に見え始める。

「おい、誰かいねーのか!いるなら早く出てこいっつってんだよ!」

「香野、いくらなんでもこれはやりすぎでは……」

 雅が止めに入る中、香野が木製の扉をドンドンと叩き続けるのだが、それがふとした拍子に中から少しだけ開かれた。

「あの……どちら様でしょうか」

 中から怯えたように、か細い声が聞こえてきた。

「あ?んだよ、いるんじゃねーか。俺は香野、グレイプニル騎士団に所属している」

「グレイプニル騎士団……?」

「ちょっと吸血鬼の噂について聞きたいことがある。中に入れてもらうぜ」

「え、あ、あの……!」

「香野!」

 食って掛かるように話かける香野の後頭部に、しびれを切らした珀憂の鉄拳が飛ぶ。

 殴られた方の香野は、うめき声をもらしながらその場にしゃがみこんだ。

「お前は少し黙ってろ。あ、いやー、すみません、こいつ馬鹿なもんで」

「馬鹿ってなんだ!」

「……あっ、見たところあなたは使用人の方ですよね?よろしければ、御当主の方に話を伺いたいのですがよろしいでしょうか」

 無視。

 香野が抗議する中、珀憂は打って変わって笑顔で相対する。

 だが、彼は使用人の顔を見て何かに気付いたのか首を傾げると、

「あれ、もしかして君はどこかで……」

「あ、あの、先程町の方で一度……」

「あぁ!」

 その使用人である少女は、先刻珀憂が町で聞き込みをしていた際に出会った茶髪の少女であり、それに気付いた珀憂は合点がついたように頷いた。

 安心したように彼女は少しだけ微笑むと、扉を内側に開き、三人を招き入れる。

「では、旦那様の元へと案内しますので、どうぞ中へお入り下さい」




  



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