深い森の奥に
森の中は薄暗く、どこまで行っても生い茂る木々ばかりで自分達が今どこを歩いているのかも分からない。
「いやー、なんだかここまで来ると探検してるみたいで楽しいな!」
香野がのんきにステップなどを踏みながらズンズンと先へと進んでいく。
「香野……誰のせいでこうなったと思っているんだ」
「ん?んー……俺?」
彼は立ち止まり振り返ると、曖昧に返事をしながら笑ってみせる。
「当たり前だ!お前が『俺についてこい!』なんて言わなければ、こんなところで迷うことはなかったんだ!」
「……ごめん」
「珀憂、香野も悪気があった訳ではないのだし、そんなに怒らないであげてください。……しかし確かに言われてみると、これではいつ目的地につくのか……ん?」
ふと何かに気付いたように雅が頭の獣耳を立たせたかと思うと、そのまま現在の進行方向とは横にそれた林の中を歩き出す。
「どうした、雅」
「いえ……今あちらから物音がした気がして」
そう言いながら道無き道を進んで行けば、それからしばらくした所で彼はふと足を止めた。
「やはり……」
「へぇ、こんなところにあったのか」
彼らが立ち止まった先には、この町外れには不似合いの、きらびやかな装飾の施された屋敷が待ち構えていたのだった。
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