翌日、早朝 中心街 展望台にて
「あら?グレイプニルの子達、案外行動が早いのね」
白い髪が風になびき、絡まることなくたゆたう。
「姉さん、本当に一人で行くのー?僕も行きたいなぁ」
「だーめ、あんたはお家でお留守番してなさい。“番犬”が家にいなくてどうするの」
姉さん、と呼ばれた方の人間が優しく微笑み、傍らの少年の頭を撫でる。
対する撫でられら方の少年は、ちぇっと口を尖らすと、まるで“獣”のように獣化された手をポンポンと打ち鳴らした。
「でもさ、あいつらはともかく、姉さんは何をしに行くの?様子見だけ?」
少年の問いに姉はうーん、と少し困りながら考え込むと、それからしばらく空を仰いだ後に、さもおかしそうに、そして楽しそうに答えた。
「そうねぇ……。もし噂通りなら、アタシ達にとって余分なゴミが増えてるかもしれないから……」
「その時は、全部跡形もなく燃やしてきちゃうわね♪」
その笑顔が本当に楽しそうで、嬉しそうだったので、少年はふーん、とだけ相づちを打っておき、それ以上は追求しないことにした。
「やっぱり、僕も行きたかったなぁ……」
その時、二人を見つめていた一羽のカラスが大きく空へと羽ばたき、一枚の羽を残して彼方――東の空へと飛び去って行った。
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