帰還



 ノルンの国や本拠地オリーブで起こったラグナロクとの抗争から、既に三日が経過――

 一台の猫馬車が、オリーブの正門前に止まった。

「いやー、久しぶりに帰ってきたぜオリーブ!というか、オーディンに帰ってきたこと自体が久しいな!」

 待ちきれなかったというように馬車から飛び出た香野は、長旅の疲れを解すかのように大きく伸びをする。

 続いて珀憂が降り立った。

「はしゃぎすぎだ、香野。大体まだ朝早いんだから、そんなに大声を出すと迷惑が……」

「珀憂ーっ!」

「ん?うわっ、く、暮哭!?帰って来てたのか!」

「うわって何よ、うわって。こっちはアンタ達が帰ってくるのをずっと待ってたんだから!」

 そう言って珀憂に飛び付いてきたのは暮哭だった。その後ろでは到着に気付いたらしい美好が手を振っている。

 今彼らが立っているのはつい先日檠與と争った際に美好や暮哭が対峙した正門なのだが、その時に出来た建物への損傷は現在全て修繕されていた。

 兵士達も普段のように門の警備をし、外では指揮官指導の元鍛錬を重ねている。

「そういえば……雅はまだ帰っていないのか?戯宮を探しに私達より先に発ったはずなんだが……」

 ふと、珀憂がこの場にいるべきであろう男の姿がどこにも見当たらないことに気が付いた。

「雅?帰ってないわよ。戯宮なら多分中にいると思うけど……」

「帰ってない?そうか……入れ違いにでもなったのかもしれない。まぁあいつのことだ、すぐに戻っては来るだろう」

 仕方がないといったように彼は横に首を振る。

「そ、そうだな。きっと雅なら心配いらねぇよ!それこそあいつは俺より全然強いからな。もし何かあったとしても……」

「おい」

 香野がどこか慌てたように賛同の声を上げ、誇らしげに旧友について語り出そうとしたのだが――その前に、無人になったと思われた猫馬車の中からこちらへと声が掛けられた。




  



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