コーヒーの香り



「はぁ……まったく、新人教育というのも楽ではありませんね……」

「んー、おつかれ、雅(ミヤビ)」

「……香野(キョウノ)……。またあなたは勝手に私の部屋に入って……」

 自室に入ってすぐ、我が物顔でソファに寝そべる旧友に眉を寄せた雅は、上着を椅子に掛けるとそのまま慣れた手つきでコーヒーを二杯淹れ、香野の向かいの椅子に腰を下ろした。

 一方の香野は悪びれた様子も無く出されたコーヒーを早々に飲み干すと、すぐに「おかわり」と空になったカップを差し出してきた。

「なぁなぁ雅、新しく入ってきた新人ってやっぱり人間?一般兵?どんな奴?」

 子供のような屈託の無い笑顔に、雅もつられて微笑み返す。

「えぇ、とてもやる気に満ちた方でしたよ。確かあなたのとこに配属されると言ってましたし……悪くはないと思います。仲良くしてあげて下さいね」

「ふーん、そっかー」

 香野は自分から聞いたにも関わらず興味無さそうに間延びした返事を返し、ソファの背もたれに大きく寄りかかると、あぁ、とふと何か思い出したように顔を上げた。

「そういえばさっき、珀憂(ハクウ)から連絡があってよー」

「連絡?」

 香野に頼まれた二杯目のコーヒーを淹れるために席を立った雅が振り返った。

「そ。各隊長宛てに」

 そう言った香野の顔はどこか楽しそうだった。




  



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