ねぇねぇ聞いた?また出たんだってよ。
街外れの森の中だって。
何でもついに怪我人が出たらしいよ。
今度捜索隊も出るみたいだし、何も起こらないといいけど……
そういえば噂だと“吸血鬼”は金色の髪に緑の瞳を持ってるんだって。
昼間は隠れてて絶対に見つからないらしいよ。
森の中から夜な夜な変な音が聞こえてくるっていうのもそれが関係あるのかな。
本当に怖いね。
でもでも、本当にいるのかな……“吸血鬼”なんて、おとぎ話の中の世界でしょ?
本当にいる訳がないよ。
きっと嘘に違いないさ。
誰かがついた虚言に過ぎない。
そうだ。
じゃあさ、私達で確かめに行ってみようよ、その“吸血鬼”ってやつを。
えぇー、危なくない?
食べられちゃうよ。
大丈夫だって、もしもの時には逃げればいいんだからさ。
それに、噂の“吸血鬼”は血を飲まないらしいから。
本当に?
それなら大丈夫かなぁ。
じゃあ、今夜十一時に森の入口に集合ね。
遅れちゃ駄目だよ。
子供達が去って数時。
もう夕暮れにも近いその頃、彼は誰もいない森の中、一人でにそっと口を開いた。
――大丈夫、ばれやしないさ。