彼女の報酬



「へぇ……起きてたんだ、烏くん」

「そりゃあもう、あんだけ水浸しにもなれば嫌でも目が覚めますってぇ」

 戯宮は小馬鹿にしたような薄笑xいを浮かべると、檠與の背を蹴り飛ばし距離を取った。

「しかしよく分かったね。こうすれば攻撃が当たるって」

 右肩を押さえながらにそう言うと、戯宮は呆れたように溜め息を吐き出した。

「よくって……君、さっき言ってたじゃないですかぁ。『私の意思が働く限り』って。ならこうして意識の届かない不意をつけば当たるんじゃないかと思いまして、ね」

「なるほど、だから狸寝入りを決め込んでたって訳か。いやぁ、これは参った!さすがに君は頭がよろしかったようだ」

 すると檠與は足元から徐々に霧化を始めていき、段々と体を周囲の景色に溶け込ませていく。

 最後に彼はチラリとオリーブの方を振り返ると、また楽しそうに笑みを浮かべた。

「あぁ、せっかくの彼女の報酬がパァになってしまったが仕方ない。君は茉淦のお気に入りだ。だからまた会おうじゃないかねぇ、烏くん?」

 彼はそう言うと同時に、完全な霧となり景色の向こうへと消えていってしまった。




  



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テーマ「人外ファンタジー」
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