不意打ちをかけよ



「上級魔法か……!」

 迫り来る水の柱に檠與は一瞬驚いたように目を見開くが、すぐにまた不敵な笑みを浮かべると、片腕を持ち上げた。

「良いねぇ…水の上級魔法なんて初めて見たよ。うちのお姉様と良い勝負なんじゃないかなぁ……さぁ、“散れ”!」

「!」

 その彼の言葉が言霊となり、現実となった。

 暮哭の放った水柱が先端から霧のように霧散を始め、全てが水霧と化したのだ。

 周りに雨のような水滴が降り注ぎ、二人の間を交差する。

「私に対する全ての攻撃は皆無だ。打撃も魔法も、私の意思が働く限りは当たることは無い」

「……なによそれ、どんな攻撃も無効ってずるくない?」

「あぁ、何とでも言ってくれ。じゃあ、私はこれで帰るとするよ。目的も果たせたしね」

「目的……?」

「あぁ、とっても楽しい余興さ!」

 そう言って彼は深く帽子を被ると、ニヤリと笑いながら嬉しそうに闊歩した。

「グレイプニル騎士団の皆さんのために用意したせっかくのプレゼントだ。楽しい一時を過ごしてくれることを祈っているよ」

 そして彼は二人にクルリと背を向けると、正門に向けて軽快に歩き出す。

「それでは皆さん、また会おう!さような……っ!?」

 檠與が別れを告げようとしたまさにその時、突如として彼の右肩に激痛が走り、驚き混じりに視線を向ける。

「その様子じゃあ……不意打ちは成功したみたいですねぇ」

 そこでは気絶して檠與の肩に担がれていたはずの戯宮が、彼の肩に深々とナイフを突き刺していた。




  



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